鋼鉄隊長

機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWERの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

4.5
大阪ステーションシティシネマにて鑑賞。舞台挨拶付き。

【あらすじ】
一年戦争が終結して数ヶ月。連邦軍はジオン残党軍との戦闘等、戦後の混乱の沈静化を図るが連邦軍勢力の軍閥・南洋同盟が不穏な動きを見せはじめる…。

ロボットアニメとして観てもとても面白い映画だが、これは素晴らしい娯楽戦争映画でもあった。
冒頭、ア・バオア・クー要塞攻略戦にて、特定のモビルスーツ(以下MS)に視点を固定するのでは無く、様々なMSが登場しては破壊される様を流動的に映し出すという戦闘描写は、『空軍大戦略』の戦闘機による大空戦や『史上最大の作戦』の上陸作戦での歩兵達を彷彿とさせる。そうかと思えばその後の南極での海中戦は、ジオン残党軍の閉塞的な空気や海中で燃料切れになったガンダム内部の緊張を描くことで、『潜水艦イ-57降伏せず』のような重厚な潜水艦映画の側面も見せる。
MSという超兵器を最大限に活かして様々な戦争を見せる演出の数々には終始興奮した。この映画はガンダム映画である以前に最高の戦争映画であると言える。
この映画は前作同様にジャズや歌謡曲が挿入されることで独特の世界観を構築した作品となっているが、今回は特に特徴的な音楽の使われ方が見られる場面がある。それはジオン残党軍が諜報員と接触するためにアッガイ(ドラえもんみたいなMS)を引き連れて海から現れるシーンだ。ここではマンボ調にアレンジされた「串本節」が挿入される。「ここは串本、向かいは大島~♪」と言う歌詞には、かつて紀伊大島の歌であり「ここは大島、向かいは串本」と歌われたオチャヤレ節が、串本の宣伝により変更されたという背景と、この映画での主役の座がガンダム(連邦軍)からジオン軍に変更されていることが重なって見えて面白い。
最近になってガンダムを観るようになったが、一気にガンダム(と言うかサンダーボルト)の虜になった。これは本当に素晴らしい映画だ。
鋼鉄隊長

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