CHEBUNBUN

オン・ザ・ミルキー・ロードのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【クストリッツァ版「この世界の片隅に」】
「黒猫・白猫」「アンダーグラウンド」で観客をUNZA♪UNZA♪ロマミュージックの虜にさせたユーゴスラビアのクストリッツァ久しぶりの監督作。

何故か都内はシャンテのみの上映で悲しいのだが、有給を取った今日観てきました。

これはクストリッツァ版「この世界の片隅に」であり「ダンケルク」であった。

ユーゴスラビアと言えば、7つの国境、6つの共和国、5つの言語に3つの宗教、2つの文字と複雑な背景を持っていた今は亡き国で、常に激しい紛争で荒れていたことで有名だ。

クストリッツァ監督は伝家の宝刀UNZA♪ミュージックとシュルレアリスムを使い、自身を主演に怒りをぶつけた。

冒頭、アヒル軍団がブタの鮮血に飛び込むシーンから、「一見統率取れている純白なユーゴスラビアは血で血を洗うカオスなヤバイ国だったんだぜ!」というメッセージが聞こえてくる。

本作は牛乳配達員(エミール・クストリッツァ)がモニカ・ベルッチ扮する無軌道な謎の美女と逃避行するという内容。

人間よりも動物にフォーカスが当たっており、「ハクソー・リッジ」や「ダンケルク」さながらの爆撃の中を、羊やロバ、蝶などが健気に生きる様子を徹底的に見せる。まさに「この世界の片隅に」で表現されていた、「地獄の人間界と紙一重で存在する自然界の天国」が効果的に演出されていた。「この世界の片隅に」とは違い、この映画の天国は激しく粉砕されていく為、ヒリヒリする程痛い。UNZA♪ミュージックにテンション上がるのに哀しく辛い作品でした。

まあ「アンダーグラウンド」が凄すぎた為、それを超えるには至らない作品ですが、一見の価値あります。
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