かささた

オン・ザ・ミルキー・ロードのかささたのレビュー・感想・評価

3.5
僕はこの監督の作品はアンダーグラウンドしか観ていませんが、たぶん作風としてドタバタガチャガチャしたいのでしょう。この作品もずっとドタバタガチャガチャしていました。
まともに動かない大きな時計や奇妙な振る舞いをする動物たちや誰に対する何のためだか分からない戦争など、この映画には人間には制御出来ないいろいろなものが出てきます。主人公(監督のクリストッツァ本人)をはじめとする登場人物たちは、その制御出来ないいろいろなことに振り回されながら、それでもなんとか人生をまともに動かそうと奮闘しています。
アンダーグラウンドでも感じたことですが監督自身の経験からか作品の中で取り扱われる死や戦争の描写は事実と同様に容赦がありません。一見笑いにあふれているような穏やかな日常にあっても死や戦争は突然降ってきてはそれまであったものをがらりとすべて変えてしまいます。

この映画ではいつも音楽が鳴っているのですが、その音楽も死や戦争によってしばしば中断されるんです。でもしばらくするとまた誰かが音楽を鳴らしはじめる。僕はこの映画のそういうところをとても好きになりました。

人間には制御出来ないいろいろなこと。
そうしたもろもろに諦め悪く何度でも立ち向かってドタバタガチャガチャもがく。そんな風なしぶとい映画です。
かささた

かささた