こたつむり

オン・ザ・ミルキー・ロードのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.8
★ あなたが安心して歩けるように。

クストリッツァ監督の集大成。
そんな印象が強い作品でした。
何しろ、脚本や監督だけではなく、主演も務めますからね。八面六臂の大活躍なのです。

ただ、違和感があったのも事実。
と言うのも、彼は二人の女性からモテモテ(彼を取り合ってケンカするほどに)。だけど、お世辞にも監督さんは“端正な二枚目”には見えませんからね。

余計なお世話ですが、人間性を理解した上でモテているのならば分かるのです。でも、モニカ・ベルッチ演じる女性と出逢って早々に相思相愛になるのは…やはり説得力が足りないと思いました。

しかし、最後まで鑑賞してみれば。
なるほど。本作は監督さんが自身で演じなければ無理だった…と理解できたのです。

兎にも角にもクストリッツァ監督と言えば音楽。今回は本人が演奏する場面がありますからね。結婚式前夜恒例のどんちゃん騒ぎも見事なもの。銃声は轟くし、ガラスは割れるし。相も変わらずのクストリッツァ節が炸裂しているのです。

また、本作の最大の功労者は動物たち。
ハヤブサ、ガチョウ、ヘビ、ロバ、ネコ、イヌ、ヤギ、ウシ、クマ、ヒツジ…これらが画面狭しと暴れまわる(あるいは可愛い姿を見せてくれる)のですよ。しかも“本物”が演じたという話ですからね。そんな彼ら(彼女ら)を扱えるのは監督さんだけなのです。

そして、舞台はユーゴスラビアを思わせる山中。これまでの作品を彷彿させる背景に馴染むのは端正なマスクではなく。丹念に物語を紡いできた監督さんだけなのです。ネタバレに繋がるので深くまで言及しませんが、最後の場面は涙無くして観ることが出来ませんよ。

まあ、そんなわけで。
9年ぶりの新作として監督さんの魅力が炸裂した作品。辛口で言えば、マンネリに感じるところも多数ありますが、それで良いのだと思います。何しろ、この世界観は唯一無二のもの。新しい“わちゃわちゃ”が観ることが出来るだけで幸せなのですから。

ただ、人を選ぶ作品であるのも事実。
監督さんの作品に触れたことがなければ、ハードルを低めに設定したほうが良いと思います。