サボン

オン・ザ・ミルキー・ロードのサボンのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

2017鑑賞

ストーリーの破綻それ自体が、不条理な暴力の歴史を語っている。
その事を教えてもらって、あの映画を考える視点が一段高くなった。
飛翔するハヤブサの目線。

大切な何かをを失った経験がある大人のための映画だと思った。
大切な何かを失うと、その重みの分だけこの世界への引力が強まるような気がする。
世界への与し方が変わる。何かを負って生きていくこと。

大きな災害を経験した人が感じるのは、生き残ったことへの罪悪感なんだそうだ。
葬いは生きている人のためにある(超私論)。
何かをせずには生きてはいけないんだろうと思う。人に人の命は受け止めようがない(と、私は思う。)。

逃避行の幕切れ、羊が宙に踊ったあの地雷が埋まる草原に、主人公が白い石を敷き詰めていく。
私は、あれは慰霊なんだと思ったなぁ。
死んでしまった彼女。羊たち。特殊部隊によって命を奪われた村の人々。戦争で命を落とした人々。
カメラがパンになって、無数に敷き詰められた白い石が映って、エミールクストリッツァの作品と祖国との関係は切っても切れないものだとするなら、あれは映画の中の登場人物に留まらず、ユーゴの歴史を悼む気持ちの表れだ。

寓話性の強さ。そういう意味では、正反対に行った「黒猫・白猫」の方が個人的には楽しく観られるわけで。
でも、観終わった後すぐのファーストインプレッションに対して、後からじわじわと、ああ良かったなって気持ちが湧き上がってくるのが不思議。