Melko

世界でいちばん美しい村のMelkoのレビュー・感想・評価

世界でいちばん美しい村(2016年製作の映画)
3.6
「どこにいても、助かる時は助かる。だからここを動かない」

明日、死ぬかもしれない危険な場所
あえてそこを選択し、暮らす人々のドキュメンタリー。
なんか分からないけど、生きる力をもらえた気がする。

ネパールの地震のことは記憶に新しい。
断崖絶壁の過酷な環境で起きた地震は、24人もの尊い命を奪った。生まれ故郷が「これ以上住み続けることは危険」なレッドゾーンに指定されたのに、それでもそこに住み続ける人々。

土地に魂は宿る

ということを真正面から捉えて向き合った作品。テンポは良くないし、ドキュメンタリーとしての緩急も甘い。踊りの場面が異様に長かったり、映像が垂れ流されてる感もある。
ただ、悲惨なことが起きた土地で
娘を失った者、夫を失った者、父を失った者、それぞれの地続きの日常と、悲しみとキチンと向き合い、明日を生きる力を体の底から湧き上がらせるあったかい雰囲気に、こういう映像体験でしか見ることのできない経験として姿勢を正す。

それぞれが抱える悲しみは計り知れないが、やはり夫を亡くした未亡人で、4000人の村ただひとりの看護師ヤムクマリの涙が切ない。
「こんなに周りの人に尽くしてるのに、神はわたしから夫を奪った。神も仏もあるものか」とやさぐれていた彼女と、村人総出で行う、夫との永遠の別れ。内戦時に連行されそうになった彼女を、身を挺して助けようとした村人に恩を感じ、残りの人生を村に捧げると決めた彼女。
健康な体、正常に働く頭。出ていきたければいつでも出ていけるけど、それでも危険なこの村にとどまるのは。

一曲の演歌を大人数で歌ったらこんな感じなんだろうなあ、な、マントラ大合唱。
誰も楽器弾いてないのに曲として成り立ってるのがすごい

神々を祀るモノは動かせても、土地を守る神は動かせないから

幼い娘を失い、つらすぎて村を出て行った夫婦は、生まれ故郷に戻り、新たな命が生まれる。「私たちが生まれ育った場所だから」

崩れ落ちそうな崖を1時間半歩いて登下校する子どもたち
頑張って勉強していい仕事について
親に家建ててあげたい
足の悪い母親を医者に行かせてあげたい
楽させてあげたい

家族がいれば、どんなことも乗り越えられる
生活のために、崖下の蜂の巣を取る
山の上の畑を耕す

山と大地
明日死ぬかもしれない
ここで死んでもいい
覚悟を持って生きる人々の、日常の先にある人生
Melko

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