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サスペリアのhynonのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
3.5
ひとりで観れる「サスペリア」。

1977年「サスペリア」のリメイク版。

思ったよりよかった。
非常に芸術的で、グロテスクさの中にも美しさがある。

オリジナルとは違う、暗くくすんだ色合いと気品と静けさは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「DUNE/デューン 砂の惑星」を連想させる。

イメージ映像がフラッシュする悪夢のようなシーンが特に素晴らしい。
ティルダ・スウィントンの起用も大成功。
(一人三役!!)
オリジナル版の主役、ジェシカ・ハーパーも登場!

なのに、それなのに…
リメイク版ってどうしてこうなっちゃうんだろう。
体裁を真似て、大事なところが抜け落ちる。

この監督のことはよく知らないけれど、非常に優秀で真っ当な人なのだろう。

この映画には「恐怖」と「狂気」がない、と思う。

狂気や変態性はなくても構わないけど、少なくともアルジェント監督にはあるし、この手の映画に恐怖がないのは致命的。

アルジェント監督版の、見ているだけで気が狂いそうな色彩。
刺殺した美女をわざわざ首吊りにしてぶら下げるナンセンスさ。
天井から○○○○を降らせるイカれっぷり。

この映画にはそういう狂気と、そこから生まれる恐怖がない。ゾッとしない。

表面的にはオリジナルをなぞっているし、オマージュらしきシーンもある。
全裸の女性たちが奇妙なダンスを踊る謎の儀式は、鬼才キューブリック監督の「アイズ・ワイド・シャット」を思い出したりもする。
かなりグロテスクな流血シーンもある。

けど、なんだろう、しょせんまともな人がつくった感が漂う。

オリジナルにはない真面目で社会的なエピソードを絡ませているのも、つまらなさを増幅させる一因になっている。

この映画を観た結果、あらためてオリジナル版のすごさを思い知ることになり、オリジナル版のスコアを上げた。
あれは、ひとりでは観れなかった。
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