ひとりで観れる「サスペリア」。
1977年「サスペリア」のリメイク版。
思ったよりよかった。
非常に芸術的で、グロテスクさの中にも美しさがある。
オリジナルとは違う、暗くくすんだ色合いと気品と静けさは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「DUNE/デューン 砂の惑星」を連想させる。
イメージ映像がフラッシュする悪夢のようなシーンが特に素晴らしい。
ティルダ・スウィントンの起用も大成功。
(一人三役!!)
オリジナル版の主役、ジェシカ・ハーパーも登場!
なのに、それなのに…
リメイク版ってどうしてこうなっちゃうんだろう。
体裁を真似て、大事なところが抜け落ちる。
この監督のことはよく知らないけれど、非常に優秀で真っ当な人なのだろう。
この映画には「恐怖」と「狂気」がない、と思う。
狂気や変態性はなくても構わないけど、少なくともアルジェント監督にはあるし、この手の映画に恐怖がないのは致命的。
アルジェント監督版の、見ているだけで気が狂いそうな色彩。
刺殺した美女をわざわざ首吊りにしてぶら下げるナンセンスさ。
天井から○○○○を降らせるイカれっぷり。
この映画にはそういう狂気と、そこから生まれる恐怖がない。ゾッとしない。
表面的にはオリジナルをなぞっているし、オマージュらしきシーンもある。
全裸の女性たちが奇妙なダンスを踊る謎の儀式は、鬼才キューブリック監督の「アイズ・ワイド・シャット」を思い出したりもする。
かなりグロテスクな流血シーンもある。
けど、なんだろう、しょせんまともな人がつくった感が漂う。
オリジナルにはない真面目で社会的なエピソードを絡ませているのも、つまらなさを増幅させる一因になっている。
この映画を観た結果、あらためてオリジナル版のすごさを思い知ることになり、オリジナル版のスコアを上げた。
あれは、ひとりでは観れなかった。