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サスペリアのTakaCineのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.0
【より前衛的なホラーへ】
正直、意味が分からなかった😢
でも本家よりも、グロくて不気味で穢らわしかった…

〈アナザー・サスペリア〉
『サスペリア』(1977年)の「リメイクというよりカバー・ヴァージョン」(ティルダ・スウィントンのコメント)という言葉通り、基本設定は引き継ぎつつ、オリジナル要素で再構築した新たなる『サスペリア』。違うパラレルワールドの『サスペリア』って感じですね😉

極彩色の非現実世界が印象的だったアルジェント版と違い、今回のグァダニーノ版は、連続テロや学生デモで街が破壊され、ベルリンの壁で東西に分断された社会不安漂う、1977年の暗いベルリンが映し出されます。

厳しい情勢の中、バレエ舞踊団で生きる女たち。女の園で渦巻く派閥争い。やがて人間の域を越える壮絶な修羅場を迎えることに…

〈隔離された女の世界〉
女は凄い(そして怖い)。生命を生み出す力強さ、情念の奥深さ、女同士の嫉妬、集団心理の怖さ、洗脳、依存、献身、報復…狂おしいほど隔離された女のみの世界(アルジェント版は、男のダンサーもいた)!男が入れる余地がない(ただ1人を除いて)。美と妄執。

バレエ舞踊団はピラミッド社会。ファシズムの恐怖を感じさせます(独裁と腐敗の匂い)。

長年その頂点に座していたマルコス夫人。腐敗そのものを体現する、表舞台には決して出ない謎の人物。

表舞台のリーダーは、ピナ・バウシュを彷彿させるブラン夫人(ティルダ・スウィントン)。スウィントンは、今回一人三役(それぞれ自我、超自我、イドを表した存在。む、むずかしい😅)をこなします。『オルランド』や『コンスタンティン』でも披露した、彼女の特異な個性が活きてました😉♪安定した怪演です。

次なるリーダーを決める投票と、ある目的を達成するために行われる謎の儀式。

様々な暗喩が込められすぎて、頭がパンパンになって咀嚼など到底出来ません😅(笑)

〈呪術的な群舞シーン〉
アルジェント版では意味がなかったダンス要素が、本作では重要な意味を持ちます。

バレエ舞踊団のダンスは、コンテンポラリーダンスに属するもの。暗黒舞踏(マリー・ヴィグマンのダンスがモデル)と呼ばれる呪術性が濃厚な魂とイマジネーションで構成したダンス(いかにも知ってるみたいに書いちゃいましたが、僕のイメージを書いてます)。復活のためのダンス。女性ばかりの群舞シーンは、シャーマン(憑依)をイメージさせますね。

裸体に紐衣装を纏った女たちは、エロチックで原始的で観念的でゾワゾワさせられます。この群舞シーンに、僕は凄く魅入ってしまいました😍✨✨

何が復活しようとしているのか?

その後に起こる阿鼻叫喚たる惨劇、この地獄絵図こそが、この映画最大のクライマックス‼️

復活したのは…神?悪魔?救世主?

この場面は画面が血で赤く染まる凄まじい描写が圧巻…ただ好きかと聞かれたら僕は嫌いでした😓僕はCG描写に非常に違和感を持つ方なので、CG凄いなあ~としか思えなくて、一向に怖さが伝わり切らないのです(CGは仕方ないかもしれませんが)。

『サイレントヒル』も同様で、CGの地獄絵図が大の苦手でした。

でもビックリする場面ですね。

〈破壊と再生の物語〉
旧体制は死に絶え、新体制の支配が始まります。破壊と再生。

この地球上で、古から続く破壊と再生の物語。種族ごと根絶した黒歴史さえあります。

ジェノサイド(集団殺戮)。

脳裏に浮かんだのは、ホロコースト。主要登場人物の1人の男は、ホロコーストの犠牲者として今も深い闇を抱えています。彼自身の闇と女たちの闇が共鳴し合い、ついに繋がってしまいます。

殺戮という人類の負の遺産。
殺し殺される歴史は、いつまで続くのか、いつまで繰り返すのか?

この負の遺産を止める者は誰か?

本作で示される浄化と解放。人類の記憶として刻まれた、負の感情も傷痕も一旦消し去ってしまいます。

新たなる再生を創造するのは、結局、神?悪魔?救世主?

僕は今もその答えに悩んでいます😥

〈効果絶大な音楽〉
本作の音楽担当は、なんと「レディオヘッド」のトム・ヨーク‼️彼が創造した調べは、"ポエティックでメランコリー"で、深く沈み込む悲しみや苦しみが、ゆっくり潜在意識に押し寄せて来るようでした。切なくて美しい音楽(アルノルト・シェーンベルクの音楽がイメージ)♪

ゴブリンの不気味な旋律や不協和音とは違った魅力がありました。

〈驚異の人体破壊〉
ある生徒が遠隔で肉塊にされる場面が白眉(観てもらいたいので、これ以上は書きませんw)‼️アクセル全開でグロい😍これは凄かった😂‼️

〈忘れじのヒロイン〉
ジェシカ・ハーパー(アルジェント版のヒロイン)の可憐な面影。彼女の為に用意された物語を知ると、グァダニーノ監督の『サスペリア』愛が深く感じられて泣けてきます。

〈蓋を開ければ賛否両論〉
アルジェント版の上映時間99分に対して、グァダニーノ版の上映時間は152分。

それだけの内容が詰まっていたので、僕は殆ど飽きませんでした(長いとは思ってましたw)。迫力ある群舞シーンに魅せられ、驚愕の展開と難解な話に頭を働かせながら観てましたからね…😅

ただ謎解きに頭を使ってしまうと、怖さが薄まってしまう気はしましたけど😓💦(僕は、1度に複雑に考えられない単細胞なので)。

結論から言えば、視覚的な恐怖はアルジェント版が優れていて、観念的な恐怖はグァダニーノ版が優れていたのではないでしょうか。

換骨奪胎した作品としては成功していると思いますが、毛色が違いすぎて面食らう方もいるかもしれません。僕も凄く戸惑いましたから😅

そこが評価が分かれそうですし、とにかく意味が分からない描写が多くて、僕も悩みました。

ただ1つ確かなのは、「女は怖い!」という結論のみ😉(笑)
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