Inagaquilala

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イイネ!イイネ!イイネ!(2017年製作の映画)
3.0
例えば「タイガー&ドラゴン」。圧倒的な物語性に支えられたクレイジーケンバンドのこの名曲に比べて、本作品の物語のチープさがまず気になる。幼馴染みの3人が大人になってからの交流譚がドラマの中心となるのだが、これに絡んでくるヤクザの麻薬取引と彼らに追われるヒロインの話があまりにもありきたりで、総じてかなり雑なつくりという印象を受けた。

物語がお寒いぶん、かといってクレイジーケンバンドの曲を前面に据えた音楽映画を目指しているわけでもなく、そのどっちつかずの在り様に、観賞前に抱いていた期待は一気に萎んでしまった。

東京ではなぜかTOHOシネマズ新宿でしか上映されていないこの作品、正直言って、クレイジーケンバンドの横山剣が詞で描く世界の半分も、物語がその領域に達していない。たぶんそれは脚本の安易さにも問題があるのだろうと思うが、人物描写に関してもかなりの中途半端さを感じる。

主人公(なんと横山剣が演じている)が救け、恋心を抱くヒロイン (ハリン)を追うヤクザの進藤(金子賢)。物語の前半では圧倒的な残忍性を見せるのだが、後半に入るとにわかに愛に殉ずる男へと豹変する。ならば前半のあの派手な演出は何だったのか、首を傾げざるを得ない。

主人公を演じる横山剣の演技にも無理があったように思う。極力、セリフは少なくて済むよう寡黙な男の設定にしてあったようなのだが、むしろ彼のセリフは徹底的に歌に乗せるミュージカル調にしてしまったほうがよかったのでは。いくつか出てきた歌うように語るセリフがなかなか印象的だったので。クレイジーケンバンドのメンバーも本人役として出演しているが、どのようにストーリーのなかに噛み合わせるか、なかなか苦労している様子がうかがわれた。

そもそもシリアスに語られるヤクザのストーリーとクレイジーケンバンドのキャラクターがまったく合っていないというのが問題なのだと思う。かつてリチャード・レスター監督がビートルズを使って「HELP!」という作品を撮ったとき、圧倒的にユーモアを交えて、軽やかなエンターテインメントに仕上げていたように、ヤクザのサブストーリーの部分に、そんな遊びがあったらまた違った作品になったように思う。

だいたいタイトルから自分が想像していたのは、そういうイメージだったのだ。遊びと軽快さが、この作品には足りない。シリアスな演技や物語は必要ないのだ。かなり作品に期待していただけに、敢えて苦言を呈してみた。