たつかわ

彼女がその名を知らない鳥たちのたつかわのレビュー・感想・評価

4.3
恋ではなく愛の物語

先月、原作者が同じ「ユリゴコロ」は俳優のオーバーアクトなど様々な理由からあまり好きではない作品だったが、個人的な不満を吹き飛ばす作品だった。

白石監督と言えば、「ぶっこむ」でお馴染みの「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」といった実録物作品で有名になったが、今回初めてラブストーリーに挑戦した。といっても最近のムネキュンの恋というよりも愛の作品である。

宣伝文句として「共感度0%」という触れ込みだがそれは嘘である。監督やスタッフ自身が原作段階で主要4人のうちの一人にほれ込んでしまった、少なくても男性であれば、決してはっきりと共感できるとは言えないが、共感してしまうようにできている。また数回の食事のシーンが印象的で、その中で主人公が珍しく小奇麗な格好をして食事をしていたら、あるものをむさぼりつく様に食べた後のセリフが、「自分だけが十和子を幸せにできる」という不思議な光景が目に焼き付いて仕方がない。

役者がよい、特に目新しさでは竹野内豊。この人のイメージは寡黙そしてカッコいいというイメージだが、非常に暴力的で生き方の下手くそな役という新たな一面を見せている。そして「ユリゴコロ」で オーバーアクトであった松坂桃李だが、舞台「娼年」の経験の成果なのか、ベットシーンがうまい。そしてある悲劇が起きる前と後の声の使い方がうまく、薄っぺらい男を表現している。

ちょっと気になるのは回想シーンの入れ方だ。回想シーン自体はとても感動的で入れること自体には問題ないが、あのタイミングで入れるのは、唐突感があり、そのまま行かせてあげればいいのにと思った。

結論としては、とても良作で今年は日本映画に関してはあまりいい作品が、少ないが絶対見逃せない作品です。そして監督が違うことで役者も作品もダメになるし、良くなることが分かった作品でした。

おススメです。
たつかわ

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