悠

彼女がその名を知らない鳥たちの悠のレビュー・感想・評価

3.6
【あなたはこれを愛と呼べるか】

「あかん、一通逆走しとるで。まあええか。」

呟きが陣治の生き様を物語っている。別に彼は優しいわけではないように思えた。あの愛は、歪んだ一方通行だ。「十和子の為」という建前の、陣治のためだろう。黒崎と水島、十和子だってそうだ、自分が一番可愛い。ベッドシーンが多い映画だけれど、性行為が本能を象徴している。相手を悦ばせるだけの陣治、思い出と称して記録する黒崎、前戯すらおろそかな水島。それらすべて受け入れる十和子が、女の愚かさを映しているようで苦しかった。

潰れたクリームパンを見たときの、しょうがないなぁ、何やってるの、っていう母性を含んだはにかむ十和子の笑顔は愛しさを体現しているみたいで、嫌いじゃなかった。だから、私はこんなに苦しいのいらないけど、"鳥たち" の名を、十和子が知ったのなら、これを愛と呼びたいと思った。
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