ohassy

彼女がその名を知らない鳥たちのohassyのレビュー・感想・評価

3.5
「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」と、見応えある実録モノで個人的にも大注目の白石和彌監督作品。
どちらの作品も色を付けすぎず、かといって観やすい作品性もあって、ドキュメンタリーでもない、エンターテイメント性の高い映画作品になっている。

やっぱり歴史や歴史モノが好きなのと同じように、事実に基づいた物語が好きなんだと思う。
フィクション作品は「いかに登場人物やストーリーに共感できるか」というのがシナリオのキモになるけれど、事実に基づいた物語というのは「どれだけ自分の価値観や感情を逆撫でされるか、驚かされるか」に価値があるというか、面白さがある。

「信じられない、でも事実だ」という、なんとも言えない気持ち。 「ひどい話だがどこか高揚したり、少しは理解してしまう」自分。
えげつないところを突いてくる。

歴史モノはそれでも時間に中和されていて、伝える人たちの意にかなったストーリーになりがちだが、近年、おそらく明治以降の出来事などはまだ、理解しがたい感情や生々しさが味わえる。
おススメです。

そんな監督のフィクションモノはいったいどうなる?

これまでのドライな捉え方は生かしつつも、キャラクターとストーリーをしっかりとコントロールした、非常に完成度の高い映画と言えると思う。
原作は未見だけれど、きっと雰囲気をしっかり捉えているのだろうな。

人物たちの住む世界や表面的な行動は薄汚れているけれど、語っていることは一種のおとぎ話。
阿部サダさん演じる陣治も、懸命に汚くしているけれどね。
ところで蒼井優はちょっと見直しました。
冒頭の嫌な女感は良かったし、早口なのにしっかり聞き取れるのがすごいなと。

原作といえば、沼田まほかるさんの作品は読んだことがない。
これだけ面白いというか特別な経歴の方のものであれば、以前は絶対手に取っていたはずなのに。
というか小説というものを本当に読まなくなった。
子供の頃から20代くらいまではよく読んでいたのに、いつ頃からか全く。
まだしばらくは読まなそう。

予告で知った次の作品「32(サニー)」がまたすごく面白そうで楽しみです!
ohassy

ohassy