まぐ

彼女がその名を知らない鳥たちのまぐのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。
登場人物全員が最初と最後に違った印象になるという大胆な構成が面白い映画。節々に散りばめられたその印象の転換が大きな吸引力になっている。

中でも陣治の印象は二転する。(馬鹿そう→まさか殺人犯…?→違った意味で恐ろしい)
ゲットアウトを見たばかりだったが、この映画もまた役者の不気味さを際立たせる演出が上手く、特に電車のシーンは、これまで全くそんなそぶりを見せなかった陣治の狂気を表すのに完璧な画作りだったと思う。十和子の隣を渡さない→十和子に近づく男を殺すというミスディレクションにもなっている。地下鉄の灯りで時々見える陣治の目がゾッとするほど怖い。今まで馬鹿そうだとなんとなく嘲るような目で見ていた陣治に初めて裏を感じた瞬間だった。

タクラマカン砂漠の本を読むシーンも衝撃的だった。水島のクズさには気付いていたが、唯一水島を尊敬していた部分だっただけに心から水島を嫌いになった。あの構成は性格が悪い。

あくまで個人的な嗜好かもしれないけれど最後の種明かしのシーンだけは好きになれなかった。真実を一度セリフで言わせてから後々画で見せるという二度手間感や、映画の最初の方のシーンをもう一度見せ、「もう一度見たら感動的でしょ?」という感じが…


陣治の愛は本当に愛と呼べるのか、と疑問が残るが、よくよく考えたら愛という誰しも使う言葉がさすのは共通する感情ではないのかもしれない。これはこれで1つの美しい愛の結末なのかも、などと考えさせられた。
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