kaorui

彼女がその名を知らない鳥たちのkaoruiのレビュー・感想・評価

4.5
白石作品ならではの邪悪な種子が其処彼処にひそみ、構えて観てしまう。確信犯的で反則すれすれだ。赤黒く浮腫んだ阿部サダヲのガサツさが生理的に神経を逆撫でする。おなじみ黄ばんだフィルターで紗のかかった姉一家との食事風景を不安定に捉えるショットが白石ワールドの始まりを告げる。
ところがこのシーンを境に純度が増し透明になっていく。
病的でひたすら不快な蒼井優か儚く見えてくる。阿部サダヲにある時期の自分が重なってみえて切ない。
その想いが名もなき鳥となり羽ばたいた瞬間、全てが解放される。
確信犯的ミスリードを含めて紛れも無い傑作だ。
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