こたつむり

彼女がその名を知らない鳥たちのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.3
★ 僕の身体は鳥の形をした砂粒で出来ている

違和感満載の作品でした。
蒼井優さんが演じる主人公の価値観から、物語の着地点に至るまで。現実のような御伽噺。まるでナイフのように尖った寓話なのです。

ただ、それが面白かったか…と言うと。
正直なところ、前評判が高過ぎた感は否めません。「このラストはあなたの恋愛観を変える」とか、キャッチコピーも煽り過ぎですね。至って“普通の物語”でした。

でも。
本作を「普通」と言えるのは、どうやら“普通”ではないようです。世間では「共感度ゼロの愛の物語」なんて言われていますしね。なるほど。自分の立ち位置を再認識しましたよ。げっげっげ。

さて、そんな“ゲス”な物語を貫く骨太の存在。
それは阿部サダヲさん。特に外観…労働者としての“臭い”を感じる風貌は見事な限り。服を脱いだ時の日焼け跡まで拘ったディティールはさすがです。

しかし、ぶっちゃけた話。
その存在感に物語が負けていました。
例えば、彼の会社での立ち位置は、現場監督なのか、職長なのか、作業員なのか…いまいち分かりません。確かに物語には直接関係ない部分。でも、細かい設定の積み重ねがリアリティを生むのです。

たぶん、僕は白石和彌監督と相性が悪いのでしょう。『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』でも同じように感じましたからね。以前も「リアリティを追求するならば、もっと“裏側”まで配慮が欲しい」なんて書いた気がしますよ。

本作でそれが顕著だったのが蒼井優さん。
性的な場面はギリギリまで頑張っていましたけどね。しかし、生々しさを出すならば、部屋の中に飲みかけのペットボトルが転がすだけで良いのです。もしくは電子レンジの中を汚すとか(by『冷たい熱帯魚』)。

まあ、そんなわけで。
悪く言えば中途半端。良く言えばバランスが取れた作品。生々しい日常を積み重ねる前に鑑賞することをオススメします。僕も無垢でつるつるお肌の頃に観ていれば…もっと衝撃的だったはず…。

最後に余談として。
感想を書くために阿部サダヲさんのことを調べていたら、自分と同じ誕生日(4月23日)だと知りました。ちなみにIZAMさんも同じ誕生日。なるほど。曲者ばかりの日ですね。げっげっげ。
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