カテリーナ

彼女がその名を知らない鳥たちのカテリーナのレビュー・感想・評価

3.8
陣治の覚悟

全女性の敵と言える立ち位置で登場する竹野内豊と松坂桃李の二人は胸糞悪い 最低男の代表か
女性がどの位 嫌悪感を抱くか競うように演技の火花を散らす イケメンでモテる男という印象が漠然とあり それを逆手にとって
女を食い物にするゲス野郎を演じるには 弱いと思っていた私は浅はかだった 2人とも まるで素なのかと思うほどハマっていた
これも 演技力の賜物と言っていい

竹野内豊が 花のように可愛いくて儚げな蒼井優の顔や細い身体に容赦なく浴びせる蹴りとグーのパンチ
彼の徹底的に卑劣な暴力と罵詈雑言を
たった今まで優しい眼差しをむけていた
彼女に雨霰と降らせる その理由がじつに下らないことなので 尚更 ゲス野郎振りに拍車がかかる 車の座席から引きずり降ろされ
硬いアスファルトの上でボロ切れのように
捨てられる彼女は 心も身体も破壊され
元に戻れなくなってしまった

お店やレストランで 従業員相手に 執拗に 苦情を垂れている 女の子を見かけたら同じ目にあったのかなと 余計な事を逡巡しそうである

蒼井優演じる十和子は その後顔や腕が包帯だらけにされて ずっと心を閉ざして暮らしていたが その姿に同情した阿部サダヲ演じる陣治から 愛されるようになり
彼女の中に変化が起こる 自堕落な暮らしの中 ビデオレンタルした映画が途中で止まってしまい 鑑賞できなくなったと くどくどと店員に 無理難題を押し付ける
一旦潰された心が元に戻る前に社会への
眼差しまで 歪んでしまったのだ

陣治が十和子を本当に心から愛している
のは伝わるが 容姿や性格に多少の問題がある 彼は十分な愛情があるにも関わらず
十和子から拒絶される
だからと言って 愛する事を諦めなければ
いけない訳もなく 方法は正しくないかもしれないけど 陣治なりのやり方で 必死に十和子を守ろうとする それが十和子にはわからない 見えない のが せつないが
それは愛以外の何者でもない

鑑賞後に この作品のテーマの
『あなたはこれを愛と呼べるか』と
問いかけられたら 迷わず頷くだろう
これは 主観によるものなので
答えは割れるであろうが
陣治のあの覚悟を愛と呼んで欲しい
と願うばかりである
カテリーナ

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