踊る猫

彼女がその名を知らない鳥たちの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.3
サスペンス/ミステリとして観ると、間延びしている感が否めない。だから中盤はかったるくてしょうがなかったのだけれど、後半の阿部サダヲの行動の意味が明らかになるあたりから尻上がりに面白く感じられたので(あと、禁欲された音楽の使い方も巧い!)、結果的にこの点数に落ち着いた。つまり、この映画はラヴ・ストーリーなのだ。谷崎潤一郎的な……マゾヒストとしての阿部サダヲが献身的に尽くす『春琴抄』的なストーリーとして観ることが出来る。白石和彌監督の映画は不勉強にして『凶悪』しか観ていないのだけれど、過去と現在を自由自在に往還する手腕はなかなかでストーリーに膨らみを与えている。事務的に整理してしまえばイヤミスであるこの映画は、だけれどもこちらに安直にカタルシスや共感を委ねる形では終わってくれない。『凶悪』でもそれは変わらなかった。なかなかヘヴィな映画だ。再見を誘う力がある。
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