えんさん

ダブルミンツのえんさんのレビュー・感想・評価

ダブルミンツ(2017年製作の映画)
3.5
高校時代、強者と弱者の主従関係となっていた市川光央と壱河光夫。同じイチカワミツオという名前を持ちながら、二人はコインの裏と表のような関係となっていた。あれから数年の時を経て、それぞれ大人になった二人であるが、その後の音信は途絶えていた。しかしある日、壱河光夫に市川光央から突然の連絡が入る。それは「ある女を殺してしまった、、」というもの。女の死体を処分するという衝撃的な再会を果たした二人の関係は、次第に新しい形へと姿を変え、やがて取り返しのつかない犯罪の世界へと墜ちていくのだった。中村明日美子の同名漫画を「下衆の愛」の内田英治監督が映画化した作品。

最初観た感想としては、自分には分からないけど、すごく異様な雰囲気ながらも、その中でまともな純愛の形を描いているなというものでした。そもそも愛情というのは、よく映画で見られるような恋愛映画のような形というのは様々あるカップルの形の1つに過ぎないと思っています。毎日ベタベタするような関係もあれば、年に数回しか会わないようなカップルでも続いている人はいる。ボディタッチどころか、会話もまともにしないけど一緒にいる人もいれば、よくいうSM関係のような主従の関係で愛情を紡いでいる人もいる。愛で結ばれる関係というのは、言ってしまえばその繋がりが互いにとって心地よく、その関係を継続したいと思えばいいだけで、極端な話、その繋がりが暴力であっても、当人同士がよければ世間がどう見ようが、どう言おうが、関係ないのだ。そういう意味では、本作のような支配する側と、支配される側という主従関係で繋がる光央と光夫も、よくあるカップルの形の1つに過ぎず、本作はそうして彼らが繋がり合っていく物語を描いている。

しかし、事は単純に同性のSM関係なのかというと、光夫も光央に支配されながら、自己のエクスタシーとして光央の支配されながらも彼の後を追うことに恍惚を感じていることに愛おしさすらも感じます。彼らが大人になったとき、再び出会った彼らが光夫の愛情表現として、女を殺したという負い目を初めて背負った光央より、上に立とうという形で実現していく。高校時代の支配関係とは逆になったときに、きっと初めて光央は光夫の愛の深さ(というのは、綺麗すぎるかも(笑)、、想いの深さくらいでしょうか、、)を知るのです。だからこそ、チンピラとして生きている自分の境遇に巻き込んでしまった光夫を何とか救おうとするし、光夫は光夫で身の危険が迫っている光央を何とか救おうとする。それが終盤にすごくピュアな純愛に昇華していくのが、何ともいいのです。こんな純愛の形を久々に観た感じがします。

内容は同性愛の形になっているので、性描写の形に好き嫌いはあるかもしれません。でも、ヤクザ映画の醸し出すエロチックさが(同性愛という形ではあるけど)ムンムンしており、低予算映画ながらも映画としての独特の空間を作っていて、安っぽさを感じないのは凄いなと思います。でも、最近ラブロメ、ラブコメ映画とは違う、すごくネットリとした暗さしか感じない高校時代の描写には少し笑ってしまいますけどね(笑。