マクガフィン

DESTINY 鎌倉ものがたりのマクガフィンのレビュー・感想・評価

DESTINY 鎌倉ものがたり(2017年製作の映画)
3.1
人ならざる者がはびこる鎌倉で、心霊捜査にも詳しいミステリー作家と嫁いできた妻が怪事件の数々に直面していく様を描くファンタジードラマ。原作未読。

作中の鎌倉は霊力に覆われ人間・魔物・妖怪・幽霊共存しており設定で、前半と後半が異なるテイストが面白い。日常を紡ぐ前半パートから一転し、後半パートは黄泉の国での模様がフャンタジーに描かれる。

作品の世界観を構築するうえで欠かせないセットや造形物は細部にまでこだわっていて良いが、鎌倉イメージする背景は序盤に少しと江ノ電ぐらいしかなく、更に情景が少ないのが残念。作品設定は現代なのか20世紀なのかが曖昧で、時期を設定しているなら象徴する事柄が少しは欲しかった。

前半は、ほのぼのムードが強く、堺雅人の喜劇役者を目指しているかの演技や、高畑充希のかまってちゃんキャラはイノセント感が強い。夫妻の魅力と愛情がイマイチ感じられなく、作品の構築に重要な夫妻愛と味わい深さが欠落していることが残念で、高畑が不測の事態に巻き込まれ、黄泉の国へと旅立ってしまう後半のパートへの盛り上がりが希薄に。

夫妻の大仰な演技を中和するかのような、安藤サクラの力みがなく主演2人を邪魔しない落ち着いた作品把握能力が高い演技は流石。

後半の黄泉の国での模様が「千と千尋の神隠し」の木造建築が広大になったような世界観が好みで、この世界観なら堺の演技もまだ気にならなくなる。

黄泉の国での想像が実現する設定を活かすのだが、堺の想像力の乏しさが売れない作家の説得力を宿す結果になることが可笑しいが、邦画レベルで考えるとVFXやCGは良好で映画的な映像演出は中々見応えがある和製ファンタジーに。

漫画が原作とは知らずに鑑賞したが、解りやすい伏線の張り巡らし方と回収の仕方は抜かりなく、プロットは丁寧でよくまとまっている。
しかし、特に前半での生死に対する扱いが緩すぎるので、哲学的な死生観に繋がらなく、夫婦愛の範疇に納まる物語なのが残念。人間と「人ならざる者」の対比も弱いので、人間の定義も曖昧に。
もっと成長譚や生きる意味を描くことも必要だったのでは。

予定調和で娯楽映画的な仕上がりは悪くはないが、設定的なことに繋がる物語の深みやキャラの魅力がもう少し欲しかった。