MasaichiYaguchi

私は絶対許さないのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

私は絶対許さない(2018年製作の映画)
3.4
レイプ、それも集団レイプをモチーフにした作品というと、主演女優賞や作品賞に輝いた「告発の行方」、「さよなら渓谷」、「ポエトリーアグネスの詩」等があるが、実際に性暴力被害を受けた雪村葉子さんの手記を精神科医でもある和田秀樹監督が映画化した本作は、それらの作品と一線を画す。
この作品の最大の特長は、被害者であるヒロインを軸とした展開だけでなく、その目線カメラで映像が繰り広げられているところ。
だから冒頭に出て来るショッキングなシークエンスは、恰も観客も同じ目に遭っているようなリアルな臨場感がある。
描かれた性暴力被害後のヒロインの扱いを観ていて、日本は立法・司法・行政の機関において被害者への支援システムが無く、何故このように冷たいのかと思う。
本作においては、仲の良かったクラスメイトが手の平を返して苛め、本来、救いの手を差し伸べるべき家族が逆に彼女の深い傷口に塩を塗って追い込んでいく。
四面楚歌、無間地獄のような状況にいる彼女だったが、ある偶然の出会いからそこから抜け出る糸口を見出していく。
映画の中で「15歳の元日、私は死んだ」という衝撃的なテロップや台詞が出て来るが、この作品は不条理にも地獄に落とされた彼女が、加害者たちへの「私は絶対許さない」という怒りを糧に、恰も身体を汚した男たちに復讐するみたいに風俗という「泥水稼業」で逞しく生き抜こうとする姿を描こうとしている。
このヒロインの学生時代を西川可奈子さんが、長じてからは平塚千瑛さんが体当たりの演技で、それを佐野史郎さん、美保純さん、隆大介さん等のベテランキャストたちが支えている。
紆余曲折の末に彼女が見出した生き方は、劇中に出てくるマクベスの「きれいはきたない、きたないはきれい」の呪文のように二面性を感じさせる。