MasaichiYaguchi

バトル・オブ・ザ・セクシーズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
テニス史に残る有名な「性別間の戦い」をバレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン監督コンビが、1970年代の社会や、ファッション、音楽等の文化を背景に「世紀の一戦」を繰り広げた本人たちと激似のエマ・ストーンとスティーブ・カレルの熱演で再現する。
本作では、1973年に行われた「テニスの男女対抗試合」に至るまでの経緯と、対戦したビリー・ジーン・キングとボビー・リッグスの人となりに重点が置かれているように見える。
1973年と言えば、エリカ・ジョングの「飛ぶのが怖い」が世界的なベストセラーになったりしてウーマンリブ運動が盛り上がった年である。
テニスの優勝賞金の男女格差に端を発して物語が進行していくが、ビリー・ジーン・キングは女子テニスプレイヤーの地位向上という大義名分だけでなく、当時、彼女が世間には公表出来ない〝秘密〟を抱えていたこともバックボーンにあり、そして当初より彼女との対戦を望んでいたボビー・リッグスも〝男性至上主義〟をお題目に掲げてはいるが、現役を一旦退いた後の社会や家庭に置ける自分の状況、特にギャンブル依存症から抜け出そうとして〝大一番〟に臨んでいるように感じられる。
この〝大一番〟を戦った2人、ビリー・ジーン・キング役のエマ・ストーン、ボビー・リッグス役のスティーブ・カレルの〝そっくりさん〟ぶりさることながら、試合シーンを中心としたスピーディでパワフルなテニスが見事だと思う。
試合後に勝者と敗者に訪れる何とも言えない〝ひととき〟。
どんなに家族をはじめとして周りの者が応援したりサポートしてくれても、試合の時は孤独で、対戦相手だけでなく自分との戦いなのだと思う。
この作品は、女性蔑視や同性愛嫌悪という時代に逆行しつつある昨今の風潮に対し、過去にそういった事と戦った一人の女性の勇気と葛藤を交えた物語で問い掛けている。