mimitakoyaki

バトル・オブ・ザ・セクシーズのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.6
最高!
こんなおもしろいとは期待以上!
エマ・ストーンがこれまで演じてきたキラキラ女子とは真逆の女性を魅力的に演じて新境地を開拓!
MeToo運動が巻き起こった今にもつながるウーマンリブの歴史!
そしてテニスでの熱いバトル!
自分らしく生きようと闘うセクシャルマイノリティ!

1973年に実際にあった、男性vs女性のテニスのエキシビションマッチを描いた作品ですが、LGBTの問題、男女格差の問題などは今日的なトピックスであり、今の時代にこのテーマを描く意義の大きさを感じますし、コメディとして楽しく見れるし、人物の描き方も善悪や正しいか間違いかという単純化をせず、それぞれの葛藤や背景や人となりがちゃんと描かれてるので、とても魅力的だし感情移入できました。

当時、アメリカの女子テニスチャンピオンだったビリー・ジーン・キングは、優勝賞金が女子だと男子の8分の1しかないことに納得がいかず、全米テニス協会に抗議するのですが、テニス協会のおっさんらは男性の方が女性よりも能力が高く優れているからと聞く耳を持たずでした。
キングは女子テニス協会を発足させ、自分達で資金を集め宣伝しチケットを売り、トーナメントを開催し成功するまでになりました。

そこへ、元男子テニスチャンピオンのボビー・リッグスが、男性の方が優れていることを証明するべくキングに対戦を申し込み、世界中で注目された世紀の一戦が行われることになるという話です。

キングは70年代にあった女性の地位向上運動 ウーマンリブの象徴のような存在であったようですが、ゴリゴリのフェミニストという感じではなく、ただ女性にも敬意を払って欲しいというごく当たり前の事を言ったのであり、自分のセクシャリティも、同性に惹かれるのは良くない事だと封じ込め、普通に男性と結婚もしていて、テニスのチャンピオンという事を除けば、わたし達とそう変わらない女性だったと思います。

ある女性との出会いで、彼女に惹かれる自分に気付き、戸惑い罪悪感を感じながらも、彼女を求める気持ちを抑えられなかったり、髪に触れられた時のときめきや高揚がとても瑞々しく描かれていて、誠実で献身的な夫を裏切ることへの葛藤や、テニスと恋との間でバランスがとれなくなって失敗したり、でも、目一杯悩んで自分と向き合って、自分が頂点に立つ事で世界を変えられるんじゃないかと信じて挑戦する強さが本当に素晴らしくて、キングの生き様に胸を打たれました。

かたや、女性蔑視を隠さないボビーですが、確かに女性を見下す男性至上主義なところもあるのでしょうが、子どもと一緒に遊ぶ良きパパであり、妻のことも大切にしていて、単純な差別野郎ではないのです。

元テニス王者というのは過去の栄光で、今は妻に養ってもらってて男としてのプライドが傷ついてたり、そのストレスもあるのかギャンブル依存もあって、心に傷を抱えている寂しく哀れな男で憎めないのです。

そんな2人の世紀の一戦は、ハラハラドキドキの手に汗握る展開で、テニスがすごくおもしろいし、男性としても夫としても威厳を取り戻したい男と、自分の存在と女性の地位向上のために全てをかけた女の勝負が熱く、両者にとって自分が自分であるための闘いだったんだと思います。

キングにとって本当の敵は、世間の注目を集めショーを盛り上げるために女性を敵に回したボビーではなく、女性を能力が低く、男の世話とセックスの相手をするための存在くらいにしか考えないテニス協会のおっさんらのような男性優位社会を作り出してる男達であり、そこにテニスを通じて一石を投じ、その試合だけでなく生涯を通して女性の権利やLGBTの人達のために活動してきたキングに心からリスペクトしました。
この人のこと、全然知らなかったけど、こんなカッコイイ女性がいたんだなと胸アツです。

弱い人、困ってる人のために立ち上がれる人って本当の強さがあるし、なかなか自分はそうはなれないけど憧れます。

エマ・ストーンは70年代の風貌で、すっぴんな上に地味でモッサリしてるのに、それでもめちゃくちゃ素敵!
実際のキングさんにソックリ!

そして、スティーブ・カレルがまた、驚くほどにボビーにソックリで、実際の写真か映画のワンシーンか見分けつきにくいレベルでものすごい再現度なので、役者さんてほんとにすごいなと驚かされました。

ストーリー、キャスト、何もかもが最高でほんとに楽しめたし、ゲイのスタイリストを演じたアラン・カミングの言葉にも思わず涙…。
キングの生き方とともにとても感動しました。
見どころ満載の素晴らしい作品でした!

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