潮騒ちゃん

バトル・オブ・ザ・セクシーズの潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

3.6
女のタフネスを硬派に魅せる。立ち向かう姿勢から歴史的クライマックスにいたるまで、浮かれたテンションは一切排除。ひたすらにクールを貫く。ビリー・ジーン・キングという名前が既にドラマチックだ。伝説になるに相応しい響き。成し遂げた功績はもちろん、スキャンダルな部分も細やかに明かされている。既婚でありながら女の愛人がいたという事実。彼女のメンタルを揺らし、そして支えた愛の存在に重きが置かれたおかげで単なるスポ根モノになっていない。宿敵として登場するリッグスの人物像にも唸った。超絶憎たらしいおちょくり野郎である彼にもきちんと舞台裏が用意される。愛する家族にうだつが上がらずギャンブルから抜け出せない私生活。彼にとってもまた、ビリー・ジーン同様この決戦が譲れない分岐点だったに違いない。試合後、ひとりきりになって勝敗を噛み締めるそれぞれの姿が印象的だった。どちらの背中も重い。このテーマで男を単純な悪として描いていないところが、悩ましくも好ましくもある。達成感を邪魔するこの含み…。バンザイ気分を味わいたい人には向きません。それにしてもビリー・ジーンのアップが多かった。距離感バカになってしまうくらい、監督は彼女を至近距離で見つめている。華奢なはずのエマ・ストーンが心身共に骨太に見えた。好き嫌いは置いといて優れた映画だと思う。
潮騒ちゃん

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