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バトル・オブ・ザ・セクシーズのmaverickのレビュー・感想・評価

4.2
男と女のガチンコテニス対決!テニス界の偉人ビリージーン・キングと、55歳のボビー・リッグスが1973年に対決したテニス界の名勝負の模様を映画化した作品である。まず驚くのが再限度。同じくテニス映画の『ボルグ マッケンロー』も役者のなりきり様が素晴らしく、試合も忠実に再現されていたが、こちらも再限度が素晴らしい。ビリージーン・キングを演じたエマ・ストーンは、ぱっと見でいつもの彼女と分からないくらいの変化っぷり。元が似てないエマ・ストーンを何故この役に配役したのか謎だが、課せられた役を見事に果たしている。ボビー・リッグスに扮するスティーブ・カレルは適役で、ひょうひょうとしたキャラクターが見事にマッチングしている。外見も似せていたし、内面的な深みを見せる演技力も流石だった。70年代の雰囲気も完璧に再現され、冒頭の20世紀FOXのファンファーレまで当時のロゴというこだわり様。髪型から服装に至るまで当時の空気が映画全体に表現されている。本作はコメディドラマに分類されているが、コメディとしての面白さがありながら、この2人がテニス界のみならず社会全体に与えた影響を称える作品性であり、実に感動的な物語になっている。主演の2人とジャケ写からコメディ映画の印象を受けるので、意外性は抜群だった。鑑賞して観て、実は3分の1を過ぎるまで面白味が薄くてぱっとしなかったのだが、シリアス度が強くなる中盤あたりからぐっと面白くなった。ビリージーン・キングは同性愛者であることを自らカミングアウトしている。本作もLGBTQの要素を多分に含んだ作品であり、彼女が苦悩する姿は『ボヘミアンラプソディ』のフレディ・マーキュリーと重なる。また、ボビー・リッグスはギャンブル依存症であり、それによって彼が抱える苦悩も描かれている。LGBTQと女性の権威向上を叫ぶフェミニズムとの部分で、エマ・ストーン演じるビリージーン・キング側を善、対して男性上位を掲げるボビー・リッグスの方を悪として描いてあるかと言うと、単純にそうではないのである。お互いがそれぞれに抱えているものを作品として描いている。その2人がコート上でテニスプレイヤーとして白熱の感動的な試合を見せてくれる。単純にどちらかの優劣をつけるそんな作品でないところが素晴らしい。本当に滑稽なのは、男だから女だからと相手を尊重せず、自分たちの権利だけを主張するような人達。本作で学ぶのはそういうことだ。1973年の試合から半世紀近く経つ。いろいろなことが変わってきたが、男女間にはまだまだ問題が多い。今の時代に本作が作られた意味を改めて考えていきたい。
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