回想シーンでご飯3杯いける

バトル・オブ・ザ・セクシーズの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.7
パケ写を見ると仲の良い男女混合ダブルスの話に見えるけど、実は全く逆で、'70年代に賞金格差等で窮地に立たされていた女子テニス界を救うべく立ち上がった女子プレイヤー、ビリー・ジーン・キングと、男性優位主義を掲げるベテラン男子プレイヤー、ボビー・リッグスが実際に行った試合「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」を描いた実話映画である。

何と言っても主演のエマ・ストーンの役者魂が凄い。時期的に「ラ・ラ・ランド」直後の撮影と思われるが、ここでは攻撃的なスタイルで知られる主人公を見事に演じており、あのお洒落女子の面影は殆ど無い。身のこなしもパワフルで、化粧もほとんどしていないように見える。

形式上は男女間の戦いとなっているが、主人公が主張するのは、男女のどちらが優位なのかではなく、あくまで同等である事。本作は、その基本姿勢に忠実で、男女同権を唱えた当時の女性を、とてもナチュラルに描いている。最後の試合シーンも派手な演出よりも、2人の心理描写を的確に描く事に主軸を置いており、真剣に見入ってしまった。そして、試合の結果以上に、その後別々のロッカールームで佇む姿にクライマックスを感じさせるなんて、本当に凄い。

唯一、主人公と同性愛のパートナーであったマリリンの関係が、やや演出過剰に描かれていたのが残念なところ。「ボヘミアン・ラプソディ」に於けるHIV感染にまつわる描写もそうであったが、ここをどう捉えるかは、実話映画に付いて回る問題だ。