ある日ミラノのとあるブルジョワの家庭に浮世離れした魅力的な青年がやってきて自然と居着いてしまう。その青年に家族や女中は精神的にも肉体的にも虜になってしまう。しかしきた時と同じように青年は突然去ってしまう。そして残された家族たちは青年の魅力に取り憑かれたまま崩壊の一途を辿る。
映像とミスマッチな音楽やパッチワークのように挿入される映像でいかにもアヴァンギャルドで難解な印象を受ける。
当時60年代の激動の時代を鑑みると、この青年の登場はいわば世界がひょんなことで変革してしまいこれまでの常識や社会構造が虚構のように崩れ去ってしまうことの象徴に思える。そして家族たちはの変貌は、これから世界がどこへ向かうのか分からないという不安と期待を象徴しているように思う。とはいえ、ブルジョワの家族は全員悪い方向に向かい女中は聖女に生まれ変わるというのはブルジョワへの当てつけのようにも思えるが。
これまで積み上げてきたものが虚飾であり実際は何も持っていないというブルジョワ階級の虚しさはラストシーンで象徴的に強烈に描かれる。
時代性を強く感じる作品。
ブルジョワの夫人がコテコテの化粧のまま普通に寝ているシーンは思わず笑ってしまった。