Inagaquilala

嘘八百のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

嘘八百(2017年製作の映画)
3.8
監督・武正晴、脚本・足立紳、「百円の恋」のコンビがどんな作品をつくったのだろうと興味津々で劇場に足を運んだが、期待にたがわぬ、映画の面白さが隅々にまで生かされた、かなり楽しめるコメディだった。とくに中井貴一と佐々木蔵之介のダブル主演を務めるふたりが好相性で、ふたりとも派手な容姿ではないが、勘所を押さえた「決め」の演技が光る。

中井は訳ありの古物商、佐々木は挫折した陶芸家、訳ありのふたりが、既存の骨董の権威へと立ち向かう。その武器となるのは「幻の利休の茶器」、もちろん贋作なのだが、これをめぐる騙し合いがコミカルに描かれていく。骨董の権威を演じる近藤正臣もいい味を出していて、その演技で見せる嫌らしさは最近の役者のなかでは際立っている。

冒頭の入り方とラストが呼応しており、このあたりの映像的な仕掛けもそこここにあり、映画を知り尽くした人間がつくっているなという安心感もある。骨董をめぐるコンゲームを、これだけ楽しめるコメディに仕立て上げる手腕は、「喜劇王」たる将来を感じさせるし、武正晴と足立紳の次回作にも大いに期待したい。「嘘八百」という人を喰ったようなタイトルもナイス。
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