小一郎

嘘八百の小一郎のレビュー・感想・評価

嘘八百(2017年製作の映画)
3.7
小説やマンガ原作の作品が幅をきかせる邦画の中、オリジナル脚本で頑張る武正晴監督。その監督と傑作『百円の恋』でタッグを組んだ足立紳さんの脚本ということで、スルーも考えたけれど、やっぱり鑑賞することに。

武監督作品は『リングサイド・ストーリー』も見ていて本作で3作目。いずれの作品も情ない系の人の成長物語ではないかと思う。

大物狙いだが空振り続きの古物商と、腕は良いのに落ちぶれてしまった陶芸家が出会い、かつて2人がいっぱい食わされた大御所鑑定士に仕返しするため「幻の利休の茶器」を仕立て上げ、一攫千金を狙うコメディドラマ。

笑えるかどうかは別にして、手堅いストーリーで、きちんとした仕事をしているなあと思う内容だった。

ただ『百円の恋』に比べればこじんまりとまとまった感じは否めなず、ワクワクするようなものは足りないかなあと。平日の夜の回とはいえ、観客の入りは寂しかった。武・足立コンビにはもっと刺激的な要素を期待してしまう。

と思いつつ、本作についての監督インタビュー記事をググると、次の監督コメントが載っていて、なるほどな、と。
(https://cinema.ne.jp/recommend/uso8002018010507/2/)

<『百円の恋』のころは、僕ら人生をかけていましたから。崖っぷちにいて「これがだめならもうだめだろう」というところだった。『百円の恋』のときは、それこそ足立さんの生きるか死ぬかが出たんじゃないかと思います。

『嘘八百』は、『百円の恋』があったおかげでいただいたお仕事で、崖ではなかったので、そこの感じは違っていましたね。もう少し気を楽にして作ることができました。誰からも望まれていない仕事と、求められた仕事というところでの差は大きいと思います。>

コメントを読むと、本作の古物商が武監督、陶芸家が足立さんで、崖っぷちに立った2人が作った「幻の利休の茶器」は『百円の恋』であると思えてきて、とてもしっくりくる。

そして、次のようなことを考えた。①表現者が死ぬか生きるかをかけた作品は心に響くものがある、②傑作を生みだし続けることのできる表現者は、求められた仕事でも命がけの気持ちで取り組める人なのではないか。

武・足立コンビの次回作がどうなるのか、見届けたい気分。

●物語(50%×3.5):1.75
・手堅くまとまっているけど、パンチ不足かな。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・実力のある俳優さんが揃った感じ。古物商のメガネが気になる。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・よろしいかと。