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羊と鋼の森のスペクターのレビュー・感想・評価

羊と鋼の森(2018年製作の映画)
3.0


『羊と鋼の森』 18.6.8 公開初日観てきました。 家内と一緒に!

本屋大賞を受賞したといって、家内が購読した小説。
私もいづれ読むよ、と言っていたがそのままにしていた。
家内がピアノをやっていて、アップライトであるが女性の調律師さんに来てもらっており、少なからず関心はあった。
それが映画化されることになって、封切日が公表されたのを知ったのが一週間前。
この本先に読んどかねば! と、結局、前々日一晩で読んでしまった。

小説の映画化はいろいろあるが、
私が読んだものの映画化作品を映画館で観たことは殆んどと言って無い。
“これはいいや! 映画化されたら絶対観に行くぞ!” というのは、
映画化されたことは未だに無いし、めったにない。

今回のように、映画化が決まって、しかも観る直前に“読む”というのは初めてじゃないか。

さて、本作品。
2004年「静かな雨」で文學界新人賞佳作にてデビューした “宮下奈都” の
2016年執筆の小説 「羊と鋼の森」 を監督 “橋本光二郎” が映画化したもの。

主人公、外村役の “山崎賢人” がピアノ調律師を目指すきっかけとなった場面から始まり、コンサート・チューナーとして羽ばたくまでの成長していく姿を温かいタッチで描くヒューマン・ドラマ。

単行本266頁を134分に上手く仕上げた、というより、“よく引っ張れた” という感じ。
アクションでもない、スリル・サスペンスでもない淡々とした人間ドラマをどういう風に映画化するのか! が一番の関心事であった私にとって、
“よく引っ張れた” が一言でいう感想である。

小説を比較的忠実に再現しているのには感心した。
個性豊かな先輩調律師さん達の描写が“文字”よりも“映像”だけで、
極端にいえば、そこにいるだけで黙っていても伝わってくるのは映画の特権であろう。
俳優の配役を知ってて、“多分こういう感じ”とイメージしながら本を読んでいるから、
違和感なく映画に入れた。 ことも付け加えておかなければならない。

キャスティング
*天才調律師「板鳥」役の “三浦友和”。
 映画冒頭のシーン、主人公が自分の内にあった“素質”を見出すきっかけを与えた人物。
 そのシーンのぼかしを効かせた映像表現は逸品。
 「あせらなくてよい.....こつこつ...こつこつ..」がいいね!
詩人 “原民喜” の引用文 「明るく静かに澄んで........」 を紹介する場面。 小説では一層重みを増す。
*外村の面倒見役調律師「柳」役の“鈴木亮平”。
 公衆電話ボックスがまともに見てられない人物。 ジャズバーのバンドでドラム演奏もする。
 「不安そうな調律師などだれも信用しない.....不安でも、堂々としとれ」はよかったね!
*ピアニストから調律師に転向した「秋野」役の“光石研”。
 「毎晩足元から落ちる夢見てうなされた.....」、調律師に落ちるまでの4年間うなされ続けたことになる!
他に、“堀内敬子”、“上白石萌音”、“上白石萌歌”、“仲里依紗”、“吉行和子”、
などなど、個性豊かな多彩俳優の面々が好演している。


映画として、みごと “引っ張れた” のは登場俳優さん方々の熱演は当然のことながら、
ロケ地、北海道の特に森林の映像が目一杯ながされる光景は圧巻である。
それに、VFX音響効果を伴なって奏でられる数々のピアノ曲は特筆すべきであろう。


『天空の城 ラピュタ』を思わせる、
エンディングテーマ “The Dream of the Lambs”
作曲 久石譲  ピアノ 辻井伸行
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