意外にも俺好みの空間映画だった!
(空間映画については俺の「フロリダ・プロジェクト」をご参照ください)
その空間の中でいかに音を届けるかということ、
そして、そのピアノの音が森の様な自然の空間を演出してくれること、
とてもアツい…俺好みだわ…。
俺も結構な期間ピアノを習っていたので、
共感できる部分もたくさん。
「弾いてる時は結局はひとりなんです」
ピアノを弾くってかなり孤独な戦い。
自分の技術を高めるために、自主練して、
先生には教わるけど、指摘しかされないし、
コンクールになったら、見世物のはずが、
いかにその中で自分の技術を出せるかだから、
いつのまにか音楽を楽しむことを忘れてしまう。
そんな時に確かに調律師は必要。
どういう音を出せばより自分好みの音になるかを調整してくれる。
ただがむしゃらに自分を高めることに集中するピアニストに、
そもそも自分がなんでピアノをやってるかという原点に立ち戻してくれる。
この映画はピアノの音の違いもわかりやすく表現してくれるし、
そのピアノから生まれる人間関係をも表現するので、
音楽の真の楽しさを思い起こさせてくれる。
特に初めてピアノの曲として弾くシーンになる上白石萌音の演奏で、
鍵盤がいつのまにか水たまりに変わる瞬間は、
あぁ、こうやってピアノを弾いた先の情景とか感じることがピアノの楽しさだよなと気付かせてくれる。
冒頭で述べた空間映画という要素、
つまりその音をその空間の条件の中でどう観客に届けるかということが、
この映画自身も考えてる。
映像だからこそ音の素晴らしさをどう伝えるか、
それはピアノの音が自然のいろんなものに置き換わったり、人間関係を生んだりというところを
映画というビジュアル表現がある芸術で思う存分ビジュアライズしてくれるから、
私たち観客にどう届けようかということを考えてくれる。
主人公が純粋すぎて少しウザかったけど、
まぁ、俺すぐ影響されやすいから、またピアノ弾きたくなっちゃった。