バス行っちゃった

羊と鋼の森のバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

羊と鋼の森(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

音による演出、とくに静けさを重要とする語り口だったので、最近の日本の青春映画で個人的に苦手だった「ここは別れのシーンです」「ここは努力が結実してみんなの願いがかなうシーンです」といったようなエモエモした誘導の音楽演出があまりなかったのでよかったなと。

ただ、音がすっきりした分、今度はセリフや演出のほんの少しの行き過ぎた部分が重だるく感じられてしまって。

特に夜の雪の中を飛び出していくシーンや葬儀後の森の中の椅子を挟んだ会話シーンは、まあ誰にでも伝わるように作らなければいけないのだろうけれども、それでももうちょっと、大声合戦させたり感情を爆発させたりする以外の、この作品の音に合った演出を見せて欲しかったなと。

あと、主人公は音を森の映像で捉えているというのはわかりやすくていいなと思ったのだけれども、その映像にあまり大きな変化がなくて、育った森に当てはめて音を想像しているから仕方がないとはいえ、想像もしなかった音にも主人公は出会っているわけで、そうしたときは故郷の森とは違う表情の森や別の知らない世界の映像などでアクセントをつけてくれても良かったのかなとも思いつつ、でも予算を考えれば仕方がないし、ないなりの工夫が凝らされているので、あまり贅沢も言えないか。

ただ、そんなこんなは小さなことで、これほど劇場で見るべき繊細な音の青春映画は下手するともうあらわれないかもしれないので、周りの席の爺さん婆さんどもがビニール袋をがさがさいわせてたりスマホの着信に出たりしてはいたけれど、それでも劇場で見ておいてよかったなと。んー。