MasaichiYaguchi

メアリーの総てのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

メアリーの総て(2017年製作の映画)
3.5
ゴシック小説の代表作である「フランケンシュタイン」が如何にして生まれたのかを、小説に登場する怪物同様に悲劇や絶望、偏見に彩られた原作者の女性作家メアリー・シェリーの波瀾万丈な半生を通して描かれる愛や創作秘話が切ない。
「フランケンシュタイン」はホラー映画やドラマ、アニメやゲームのキャラクターとして多くの人が知っているモンスターだと思うが、本作で取り上げられた原作(原題)「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」を読んだことがある人や原作者を知っている人がどれだけいるのだろうか?
私は宍戸儀一さん訳の青空文庫版は読んでいるので、メアリー・シェリーのことはある程度は知っていたが、映画として脚色された部分があるとはいえ、彼女の人生がこんなに不幸塗れだとは思わなかった。
今から200年前のイギリスを舞台に、当時としては先進的な考えを持つ人々が繰り広げるドラマでは、彼らが一般常識や倫理観と折り合わず、特に男性においては独りよがりのように見える。
うら若きヒロイン・メアリーは閉塞感溢れる日常を嫌い、ハンサムで才能溢れる詩人パーシー・シェリーと出会って恋に落ち、駆け落ちというかたちで今までの生活を捨て、〝外の世界〟に飛び出してしまう。
理想と希望に溢れている〝外の世界〟の筈だったが、現実はそんなに甘くなく、しっぺ返しのように様々な不幸が彼女に降り掛かってくる。
そんな不幸と失意の中で訪れた詩人バイロン卿の別荘での〝提案〟が、彼女の中で抑えていたものを揺り動かしていく。
全てのアーティストがそうだとは思わないが、何かを創作する時は自分の中で溜め込んでいるもの、逆に枯渇感や空虚感を埋めようとして溢れ出すものが原動力になっているのではないかと思う。
メアリーは自らが被った厄災を書くことで見詰め直し、それらを乗り越えようとしたのではないかと思う。
切ない愛に彩られた本作だが、温もりを感じさせるラストに救われます。