ちろる

メアリーの総てのちろるのレビュー・感想・評価

メアリーの総て(2017年製作の映画)
3.9
若い女性には素晴らしい文学作品を書くのは難しいという女性軽視的な社会がまだあった200年前のイギリスで、メアリーシェリーはわずか18歳で世界初のSFゴシックホラーのフランケンシュタインを書き上げた。
彼女は16歳の時に出逢った詩人パーシー シェリーと不倫と駆け落ちをしたことから裏腹な過酷な運命を歩み始める。

これは当たり前なのだけど恋に落ちることは幸せの始まりではないし、運命の相手=幸せの日々を共に歩めるということではないということを、メアリーの波乱に満ちた物語を通して改めて納得せざる得ない。

女たらしで自己中心的、一般的な倫理観も欠落しているパーシーのような男なぞ、姉妹や友人の恋人でも許せないのだが、結果的にメアリーがフランケンシュタインという怪物をに息を吹き込むためにはたしかにパーシーは必要な存在で、彼なしではメアリーは作家として世に出なかったし、
もっというなら天才だが人間としての倫理観の欠けたパイロンがいなければ世界初のドラキュラの文学小説も生まれない。
皮肉だがこうして世界は上手くできて誰かの残酷さやそれに傷つけられて流した涙がやがてなんらかの創造物を生み、回り回って時を超えても同じような悲しみで涙を流した人々を共感させることができる。
当時女性が苦しみ、憎しみ、絶望をこんなに表現ができるはずないと執筆すら疑われたメアリーの悔しさはどのようなものだったのか。
それは女性の社会への参加が極端に抑圧されているサウジアラビアで、初の女性監督となったこのハイファ アル=マンスール監督だからこそ理解できるたのだろうし、そのメアリーの抱えた苦悩にも勝る、静かな情熱の炎ををエル ファニングがたしかにカタチにしている女性による女性のための伝記映画だった。
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