ぐりこ

ティーンスピリットのぐりこのレビュー・感想・評価

ティーンスピリット(2018年製作の映画)
2.2
なるほど、エル・ファニングが魅力的なだけの映画だった。

歌うエル(けっこう上手い)、
踊るエル(けっこう上手い)、
ポーランド語を話すエル(日英ダブル字幕)、
動物と触れ合うエル(天使)、
意志の強いエル(眼力)、
裏契約を断りヴラドとの日々を選んだエル(偉い)、
ステージで自らを開放するエル(スパーク!)、
、、、エル・ファニング、本当に強い。


お話としては、歌手になることを夢見る田舎の少女ヴァイオレット(エル・ファニング)が、オーディションを勝ち抜くサクセスストーリーで、マネージャーとなる元オペラ歌手ヴラド(スラトコ・ブリッチ)との関係などを通して成長していく様を描いている。
そして、その過程で色んなエル・ファニングを見ることができる。

ただし、それだけだった。
さくさくっとサクセスする感じで、山谷のない一本調子のお話。オーディションの場面ばかり描いて、登場人物や設定の深堀りがないまま、すーっとエンディングを迎えた。映画としてはかなり残念な出来になってしまってる。
スクールのライバル女やオーディションのライバルあたりは印象ゼロだし、母との確執、父への想い、ヴラドの過去といったテーマはなんでもっと掘らなかったのか。母が最終オーディションに向かうヴァイオレットにもたせた“家を出た父が遺したネックレス”なんていうドラマチックアイテムは本来、最高のクライマックスへの引き以外ありえないはずなのに、まったく何も生まなかったことは本当に衝撃。おどろいた。

1つよかったところ、それはヴァイオレットが決勝のステージに向かうシーン。控室から舞台袖までヴァイオレットが歩き、そのままノーカット(たぶん)で使われている。その間ずっと正面から表情を押さえていて、少しの不安と大いなる覚悟が見て取れた。舞台が近づくにつれて歓声が大きくなり、観るものに「さぁクライマックスだ」と緊張感と高揚感を与える、そんなシーンだった。


(雑感)
・ヴァイオレットが暮らすのはワイト島という田舎の島だが、Isle of Wight Festivalは作中に出てこない。
・途中アウルシティとカーリーレイジェプセンの"Good Time"が流れて気持ち良かった。
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