タケオ

ガルヴェストンのタケオのレビュー・感想・評価

ガルヴェストン(2018年製作の映画)
3.7
組織に切り捨てられた1人の殺し屋と、幸福に見放された1人の娼婦。命を狙われながらガルヴェストンを目指すドン底2人の逃避行を、監督のメラニー•ロランは情緒溢れる細やかなタッチで見事に描き出す。5分近い長回しや光と影を意識した演出は本作が初監督作品とは思えないほどに冴え渡っており、時折炸裂する生々しいバイオレン描写も見応えがある。また、ベン•フォスターの薄汚れた佇まいとエル•ファニングの天使のような存在感が本作の根底にある'幻想的な幸福'と'絶望的な現実'のコントラストを見事に視覚化しており、どこまでもダウナーでアンチカタルシス的なラストの悲劇性を一層大きなものにしている。『俺たちに明日はない』(67年)や『トゥルー・ロマンス』(93年)みたいなのを期待していると間違いなく大事故になるため要注意、本作は'自由'や'爽快さ'とは無縁の情け容赦ない現実をこれでもかと鑑賞者に突きつけてくる。あまりにも残酷な世界を前に、2人の死にぞこないたちが唯一守り抜いたものとはいったい何だったのか?素晴らしい作品なのは間違いないが、正直2回目の鑑賞はしばらく遠慮しておきたい。
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