翔海

最高に素晴らしいことの翔海のレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
3.7
個性を失うことを恐れろ。

インディアナ州の小さな町に住む高校生のバイオレットはクラスの人気者。以前は明るい性格だったバイオレットだったが、交通事故で姉を失った喪失感から外へ出ることを恐れていた。姉の誕生日、バイオレットは事故現場の橋の淵に立っていたところでフィンチと出会う。フィンチはクラスメイトであり、学校では変人扱いをされていた。授業の一環で街の名称を調べる課題が出され、フィンチはバイオレットを指名する。塞ぎ込んでいたバイオレットを放っておけないフィンチはくだらないことで笑わせる。フィンチと共に過ごすうちにバイオレットは姉の死を受容し、明るい性格も戻ってくる。しかし、フィンチはたまに連絡も返さずに一人で過ごすことがあった。彼もまた精神的に問題を抱えていた。過去に父から受けた虐待や人と違うことが理解されない社会に行き場のない不安を感じていた。人と違うことを誇りに思っていたフィンチは次第に自分がなんなのか分からなくなってゆく。

死の淵に立つ二人。
あの日、橋の淵に立っていたバイオレットを助けたフィンチ。彼も幼い頃に死を間近に体験していたからバイオレットのことを放っておけなかったのだろう。そんな明るいフィンチにも双極性障害があって、感情を抑えきれずに暴力に身を任せてしまうことがあった。それもあって彼は学校でも孤立し、彼を理解する人達しか周りには残らなかった。変人扱いをされ、人と違うことも認められない社会。学校では協調性ばかり教えるけど、個性を伸ばそうとはしてくれない。そんな小さな世界でフィンチは苦しんでいた。フィンチによって救われたバイオレットだったが、力になりたくてもフィンチは拒絶し、命を落とす結果となった。誰の責任でもないが、フィンチはもっと生きられたはず。違う道を示す人と出会わなかったことが彼の判断を誤らせたのだから。

心に闇を抱えた10代の若者をエルファニングとジャスティス・スミスが演じた作品。定期的にエルファニングを見ることは癒しになる。かと言ってエルファニングが出てる作品が好きという訳でもない。 薄汚れた自分を浄化するために透明感のあるエルファニングを欲しているのかもしれない…笑 目的は違えど、作品を見たあとにはフィンチのように自殺を選択しないよう教訓として語り継がなければと思わされた。こう言う作品たちは授業の一環として取り上げていければ自殺する学生も減ると私は思う。もっと、10代のうちに勉強よりも学べるものが映画にはあると思う。綺麗事ばかりでは子供たちは育たないのだから。
翔海

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