オレンチ

最高に素晴らしいことのオレンチのレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
3.5
高校生のバイオレットは交通事故で姉を失ったことから立ち直れずにいた。そんな中、彼女の住むインディアナ州の名所を2名1組で回るという課題を先生から課せられた。彼女を真っ先に指名したのはクラスで変人扱いされているフィンチだった。
二人はインディアナ州の隠れた名所を回りながら傷ついた心を癒していく。

エル・ファニングとジャスティス・スミス(『ジュラシックワールド』シリーズなど)で送る『最高に素晴らしいこと』は絵作りがとても素晴らしい作品でした。

特筆するなら二人が最初にキスをするショットが最高で、ロケーションや時間、立ち位置や構図を綿密に計算されたショットだったかと思います。
時間は日暮れ。見つめ合う二人が初めてお互いの気持ちに正直になった瞬間、画面には眩い日暮れどきの太陽の光が二人を祝福するかのようにレンズフレアとして映り込むのです。

60年代以前のレンズフレアはいわゆる映画撮影におけるタブーで、絶対に映り込ませてはならないものでしたが、70年代のディケードあたりから本作のように「祝福」を表したり、被写体が「比類なき者」であることを表したり、なにか神秘的なものを表現するのに多用されるようになります。

また人物が水から上がるシーンはその人物の「生まれ変わり」「再生」を表すことが多いですが、本作でもそれを意識したシーンを見ることができます。
こちらのシーンも素晴らしく、水中から水面にでたバイオレットを真上から捉え、背泳ぎする姿はまるで羽ばたいているかのように描いているのです。まさにバイオレットは生まれ変わり、新しい人生へと羽ばたいていく様を描いているのではないでしょうか。

メッセージとしては、「本当に目を向けるべきことは、見えてないだけで実は身近にある。身近なことにこそ目を向けてみよう」ということだと思います。

例えば物語の骨子になっているバイオレットとフィンチの関係。物語は2部構成のようになっていて、前半はバイオレットの悩みと向き合い、フィンチは自由奔放に生きている少年のように描かれます。しかし後半では・・・。

また物語の展開を転がす推進力になっている「隠れた名所探し」も定量的にメッセージとフィットしていますよね。

さらにバイオレットの友達も実は・・・。というように本作ではいかに身近なものが見えていないかということを教えてくれたような気がしました。

昔読んだ自転車で地球を7周半した人の本のなかで、「普段車で通り過ぎる道を歩いてみたら、たくさん綺麗な花が咲いていることに気がついた」という言葉を思い出しました。

あらためて身近なものに目を向けてみようと思います。