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最高に素晴らしいことのシネマノのレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
3.6
「大切なことはエル・ファニングが全部教えてくれる」

姉が事故で他界して絶望の淵に立っていた女子高生のバイオレット(エル・ファニング)は、
同じ高校に通う”変人”、フィンチ(ジャスティス・スミス)と出会う。
泣くこと、笑うこと、死ぬこと、生きること。
人生とは何かをバイオレットが知る先に待つ、二人の関係、そしてフィンチの正体とは。

恋とはお互いに欠けたものを満たし合う関係なのかもしれない。
あらすじを書いてみて思ったのだが、
多くのティーン向け恋愛映画の例に漏れない本作もまた、嫌いな世界と辛い人生に向き合う”欠けた若者たち”の物語。

とりわけ心に響くでも、脚本に唸ることも、演出に魅せられるでもなく観終わってしまったけれど、
お目当てだったエル・ファニングの魅力はやはりすごい。
退屈に感じられる映画一本分、観客の気をもたせてしまうのだから。
それに加えて、いまひとつ弱かったストーリーと構成、演出で伝えたかったことをある意味すべて教えてくれるのだから。

本作では、「分からない」ということが度々用いられる。
バイオレットが姉の死を嘆いてとった行動も、自分では「よく分からない」。
フィンチがなぜバイオレットに接近するのかも、心情的にも演出的にも「よく分からない」。
その他にも物語の随所で観ている側にも、登場キャラクター自身でさえ「分からない」ことが沢山でてくる。
それこそが今の時代を生きる若者たちの心の影の部分なのかもしれない。

大人になって現実を知るということは、自分にとっての真実や限界を見出すこと。
それは良いことも悪いこともそう。
「よく分からない」からくる不安やストレス、怒りは、より若い人に共感を呼ぶのかもしれない。
そこにうまく共感できなかった自分を少しだけ寂しく思った。

強くオススメはできないけれど、リラックスした作品を観たい時にはちょうど良いかも。
エル・ファニング好きにはもちろんオススメです。
カーステで好きな音楽をかけて、好きな子とダンスしたくなる一本。
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