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最高に素晴らしいことのmaverickのレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
4.7
Netflix配給作品。エル・ファニング目当てで観たのだが、彼女の魅力だけでなく、作品そのものが素晴らしい出来。冒頭のシーンですでに心を掴まれる。心に深い傷を負った少女が、クラスメイトの少年に助けられて自分を取り戻してゆく話。心温まる優しい作品。男女の物語と聞くとすぐ恋愛に結び付き、美少女とイケメンの美しい恋愛映画を想像してしまうが、そうでない所が本作の良かった所。エル・ファニングは美少女で間違いないが、本作ではそういう立ち位置ではなく、普通の女子高生を演じている。彼女を助ける少年も、学校で変人扱いされている問題児。お節介でちょっとウザいくらいのテンションに、初めのうち彼女は心を開かない。そんな二人が徐々に心を通わせてゆく姿が微笑ましい。少女は当初心を閉ざしており、周りも気を使って距離を取っている。そんな彼女にぐいぐいと入り込んでくる少年。現実から目を逸らし、怖いものから逃げている状態の人をいたわることは大事だが、時には少々強引な荒療治が本人のためになることもある。怖がっていてはいつまでも前に進むことは出来ない。自分では踏み出せない一歩も、誰かが手を握って一緒に踏み出してくれれば出来もする。心に傷を抱えている人の苦しさや痛みが本作からは伝わってくる。それが浄化され、心が癒されてゆく様を見ている内に涙が溢れてきた。見過ごしがちだが、自分達の周りには常にたくさんの喜びや幸せがある。主人公の視点からそれを感じさせる作りとなっている。一つ一つのシーンが美しく絵になる。だがそれは映画的な美しさではなく、現実の世界の一瞬一瞬を切り取った美しさであると感じれた。それを監督はよく分かっているのだなと。エル・ファニングは相変わらずかわいいのだが、今までの作品の中で1番かわいいと思った。これまではその美貌を活かしたキャラクターを演じることが多かったが、本作では彼女自身の等身大なかわいらしさに溢れている。素に近い彼女だと感じ、これがめちゃめちゃかわいいのだ。彼女にはもっとこういう役をやらしてあげればいいのにと思う。感情もすごく自然で、演技としてもこれまでで1番だと思う。彼女のこうした良さを引き出した監督の手腕は見事だ。そして共演の少年役の役者の力による所も大きいと思う。演じているのは『名探偵ピカチュウ』のジャスティス・スミス。彼の本作での演技は素晴らしい。彼がエル・ファニングの良い演技を引き出したといっても過言ではない。この二人だから物語に引き込まれた。とても素敵な作品。最後の方は涙が溢れてしょうがなかった。心に傷を抱えている人は大勢おり、それは至極当たり前で生きている内に誰しもがそうなる。そうなった時、自分を責めるのではなく自分に優しくしてあげること。自分を大切にしてあげること。それが何より大事。自分で自分を苦しめちゃ駄目。喜びを感じ、幸せでいることが人生には必要だ。最高に素晴らしいことを教えてくれる作品。うん、素晴らしかったです。
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