柏エシディシ

孤独なふりした世界での柏エシディシのレビュー・感想・評価

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
4.0
未体験ゾーンの映画たち2019にて。

「満たされた生き方」ってなんなんだろう?

ポストアポカリプトもの、「世界に取り残されたひとり(ふたり)」もの、って映画としては枚挙に暇もないのだけれど、本作の主人公デルほどに共感した登場人物はいない。
周囲に人がたくさんいればいるほど孤独を感じる。って言葉に首がもげそうなほど同意してしまう人間にしか判らないんじゃないかな。

自分もOCD気味なところがあって、おかげさまでとりあえず社会生活に支障をきたすレベルではないものの、ときおりギリギリの時がありますわなw
だから、自分もただ独り世界に取り残されたらデルの様な生活を送ってそれなりに日々生きていけるような気がする。
(実利的なサバイバルスキルの有無はこの際置いておいて)
そして、特別に意味付けもなく、モノを蒐集したり、埋葬をしたりする行為を「すべきこと」として淡々とこなしていき、やがて独り死んでいくと思う。

誤解がある様だけれど、独りでいる事に忌避感が無い人間は、他の人間が嫌いな訳でも苦手な訳でも無いんだよな。説明し難いけれど、たしかに「変人」かもしれないけれども。ただ、そうあるのが「しっくりくる」ってだけなんですよ。

だから、「世界にエル・ファニングとさすがにふたりきりだったらワンチャン狙うだろ」って言説には全く同意出来ない。それは好みの問題とかじゃなくて、それが松岡茉優さんだろうが、アーニャテイラージョイちゃんだろうが変わらないんですよっ!(極私的意見)

じゃぁ、最後のデルの決断は納得出来ないか、って言うとそう言うこともなく。
決して交わることの無いふたつの魂が、お互いの孤独に敬意を払いつつ、それでも繋がろうとするから尊いのです。

孤独で「ない」ふりをして、体面だけでもそのカタチにこだわる連帯や繋がりの中で生きる事に意味なんてあるのだろうか?
「孤独」の本当の意味とは?
そんなことを問い掛けられる様な結末に思えた。

ピーター・ディンクレイジの「個性」は何の説明が無くともその「孤独」を雄弁に語りかけてくるし、この映画の寓話的な趣きを与えるのに寄与している素晴らしいキャスティング。

綺麗な撮影だなぁと思っていたら、女性監督リード・モレノ自身のカメラ。
調べたら、「フローズンリヴァー」の方か!評判を聞く「Handmaid 's Tail」も監督してる。同世代。注目していきたい才能。
柏エシディシ

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