ノラネコの呑んで観るシネマ

イット・カムズ・アット・ナイトのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.4
これは素晴らしい。
致死性の奇病が蔓延した、終末の世界。
ジョエル・エドガートン演じる父親と妻、17歳の息子が、山奥の大きな家に隠れる様に暮らしている。
ある時彼らは、食料と引き換えに、やむなく若い夫婦と幼い息子の三人家族を、家に迎え入れることになる。
孤独は解消し、最初のうち二つの家族は上手くいく。
だが小さな齟齬が積み重なり、家には徐々に不穏な空気が充満する。
開いているけど閉じている、独特の空間で展開する実質的な密室劇。
迷路の様な家の構造と、事件を呼び込む赤いドアの象徴性も効いている。
ドラマを引っ張るのはエドガートンの父親だが、実質的主人公をナイーブな17歳の息子に設定したのが上手い。
彼の抱える思春期の葛藤と、心の底にある不安が見せる悪夢が、物語を恐るべき結末へと導いてゆく。
人間を、本当に破滅させるのは何か。
病という恐怖の象徴によって、目覚めてしまったもの。
全編に渡って静かな緊張感が続く、優れた心理スリラー。
監督作の「ザ・ギフト」でも非凡な才能を見せたエドガートンが、エグゼクティブ・プロデューサーを兼務。
本国では残念ながらコケちゃったみたいだが、これは是非とも劇場で味わうべき作品だ。
トレイ・エドワード・シュルツ監督の名前は、覚えておいた方がいい。
ブログ記事:
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