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イット・カムズ・アット・ナイトのsssのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画のテーマは、怖いのは疫病ではなく人間自身である、ということ。
やばい状況下の人間がどのように疑心暗鬼になり、狂っていくか。
こういうジャンルってあるよね。
「エス」とか
「遊星からの物体X」とか
「テイクシェルター」とか

実際、監督は「遊星からの物体X」に影響を受けたといっているし、
「テイクシェルター」のジェフニコルズ監督とも交友があるらしい。

疫病そのものや、モンスター的なものが一切現れない事から、あくまで心理スリラーだって事がわかる。

鑑賞後、
序盤に出た絵はブリューゲルの「死の勝利」だと知って、あーこれが全て表しているなと思った。
監督自身、人間の死について興味があるといってる。

プロデューサーであり主演を務めたジョエルエドガートンは、移民問題を描いてるといってるが、監督自身はそれを意識して撮ってない、って発言してるところが面白い。
てかジョエルエドガートンは監督デビュー作が「ザギフト」で、次に今作をプロデュースするって、センスがやばい。完全にそっち側の人。つまり僕は大好き。
ブラッドリークーパーのいやらしいキャリアの積み上げ方よりも好きだ。
ブラッドリークーパーは「アメリカンスナイパー」やって次は「アリー スター誕生」で一体どんな映画が本当に好きなのか全くわからない。
一方ジョエルエドガートンは作家性がはっきりしてて良い。
本作のラストの食卓シーンもジョエルのアイデアらしい。

実際に感染したのはあの子供ではなくトラヴィスなのでは、という意見には膝を打った。
そう思えば確かにトラヴィスは不眠症だと言っていたし、よく夢を見ていた。
夢の中で犬を探しにいったのは、夢ではなく現実だったと十分考えられる。

トラヴィスが若妻をエロい目で見てるって所は上手いミスリードだった。
そっちで危ないことになるのでは?とまんまと裏をつかれた。実際はそれどころではなかった笑
(ちなみにあの若妻って、マッドマックス怒りのデスロードやアンダーザシルバーレイクに出てた子だよね。最近良く見かける)

今作の評価があまり高くないのはわかる。
エンタメ特化してないし、何より後味がめちゃくちゃ悪い。
劇場で見かけたあのカップルにはマジでご愁傷様としか言いようがない。
彼氏が鑑賞後に苦し紛れに「考えさせられる映画だよね」と言ったのには涙目になった。

ただこの監督の試みや、異質な映画をみたい、と思う自分にとってはすごく良かったです。

現実シーン、夢シーン、終盤シーンではそれぞれアスペクト比を微妙に変えてる事とか。
挑戦的でいいじゃないかと思う。
次回作は同じくA24から「waves」というのを出すらしい。いま編集中だとか。
楽しみにしてます。
sss

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