【そういうホラーじゃない話】
『IT COMES AT NIGHT』観ました。
今大注目の映画制作会社・A24の作品。
A24だから、ただのホラーでは済ませないとは思っていた。
上映時間を観ると92分。
なあんだ、サクッと観られるじゃないか。
そんな軽快なワクワクは本編開始10分後、重篤な恐怖へと一変する。
え、これをあと80分も耐えなきゃいけないのか.....
この映画は、音でも気配でもなく「疑心」の中に恐怖を生み出していたのだ。
これが、心理スリラーか。
キャッチコピーには「外には恐怖 中には狂気」とあるが、映画を通して狂気が恐怖に勝つ瞬間を目にすることができる。
狂気。言い換えれば凶器。
その証拠に、主人公の少年は見えない存在である“IT(それ)”ではなく、物理的な銃であったり、それを使う人間の行動に恐れを感じ、“AT NIGHT(暗闇)”にわざわざ潜り込んでしまう。
IT COMES AT NIGHT.
果たして、“それ”は外からやってくるのか。それとも、中から生まれてしまうのか。
外でさまよう恐怖と中でうごめく狂気。
その間にあるわずか数センチの赤いドア。
それぞれの脅威に板ばさみになり、文字通り身動きがとれない。
逃げたい。
でも
逃げることすら怖い。
もしかして、ドアの鍵を開けてしまうのは怯えた私たちなのかもしれない。
鍵を開けた先で、この恐怖はいったいどこへ向かうのか。
ありきたりな“そういうホラー”じゃない、新しい極限心理スリラーを見届けられたこと、「安堵」として定義したい。