yumeayu

イット・カムズ・アット・ナイトのyumeayuのレビュー・感想・評価

3.0
"疑心暗鬼"

世の中がコロナ騒動のタイミングでこれを見るのは、ちょっと考えさせられるものがある。

謎の疫病によって壊滅した世界が舞台(おそらく)。
ポール一家は"それ"の感染から逃れるべく人里離れた森の中でひっそりと暮らしていた。
厳格なルールのもと生活していたポール一家だったが、謎の男ウィルが助けを求めにやってきたことから事態は一変。
やむなくポール一家はウィルとその家族を受け入れるが、見知らぬ人間と暮らすストレスと夜にやってくるという"それ"の存在に怯える日々が続く…。


今作のようなパンデミック映画、あるいはゾンビ映画において、一番怖いのは人間だというのはもはやセオリー。
目に見えない得体の知れない何かに対して怯えていると、次第に他人に対しても同様に怯え、恐怖の対象になってしまう。
今作において、"それ"は最大の謎のではあるのだが、あくまで物語を進める上でのマクガフィン的存在に過ぎない。描かれるのは極限状態における人間の心理や心の弱さであり、それらを物語の中心に置き、終始淡々とした雰囲気ながらも緊張感のあるドラマとなっている。

見知らぬ家族と徐々に打ち解け、協力しあい暮らし始めたまでは良かったのに、一度疑ってしまうと後には戻れない悲しさ。そしてその疑念は収まることはなく、どんどんと膨らみ疑心暗鬼となってしまう。
こうなってしまったら、もう後戻りはできない。終盤の展開はなるべくしてなったと言えなくはない。
残るのは悲しさと虚しさだけ…。

予告などではホラー映画のようなアピールをしているが、それを期待していると肩透かしを食らうかもしれない。
ただ、個人的にはここまでオーバーではないものの、今の世の中も一歩間違えれば、このような事態になりかねないと思うとゾッとした。
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