GOROTUKI

アフターマスのGOROTUKIのレビュー・感想・評価

アフターマス(2016年製作の映画)
3.8
自身映画を観賞する際、
注意して観るルールがある。
冒頭
「inspired by a true story」
訳:事実に基づく物語
このメッセージがでるときである。
とくに実際の事件概要を知らずに、
観賞する際、映画演出の都合上
間違った事実を刷り込まれる可能性があるからだ。観賞した人の中には、「こんな酷い話なんだよ。」と、映画で描かれている方が事実だと受け止めてしまう人も多々いる。(自身もそうだ)
そして、酷い作品だと全く違うメッセージが
観客に受け入れられてしまう可能性があるからで、劇中では描かれなかった本当の動機・犯行の詳細と事件関係者のその後を
書き込みます!
では感想

〜おっさんでもわかるユーバーリンゲン空中衝突事故〜
映画の題材となる飛行機空中衝突事故は、2002年7月1日の午後9時35分、ドイツ南部のユーバーリンゲン市上空で、ロシアのバシキール航空の旅客機(乗客60人、乗員9人)と、バーレーンの定期貨物便(パイロット2人)が衝突し、71人全員が亡くなった。
事故原因は劇中で描かれている通りで、当該空域を管制していたスイス・チューリッヒにある民間航空管制会社「スカイガイド社」管制官のミスで起こったのだ。
では何故起こったのか?これが酷い!
規律違反が横行していたからだった!
①2人いるはずの管制官が1人だけだったこと。
②機器点検中で通常、管轄内で飛行機が異常接近した場合に鳴る接近警報装置が無効になっていたこと。
③電話回線の電源がOFFだったこと。
ありえない状況だったそうだ。
当然、管制業務に支障が起き、予定が遅れていた飛行機の進入に気を取られ、衝突した両機の異常接近に気づいたのは衝突のわずか43秒前。そのとき両機では、空中衝突防止装置が互いの機影を捉え、旅客機は上昇、貨物便は下降しろと適切な指示を出していたのにもかかわらず、状況を把握しきれていなかった管制官が旅客機に下降せよと誤った指示を出す。そこで旅客機のパイロットは空中衝突防止装置ではなく管制官に従って下降し、貨物機と衝突してしまったのである。実は、管制官の指示と空中衝突防止装置の指示が相反する場合、いずれを優先すべきかの国際的基準はなく、この事故後に、空中衝突防止装置に従うことが定められた。
シュワちゃん演じるローマンのモデルになっているのが、ロシア人建築家のヴィタリー・カロエフで、奥さんと10歳の息子さん、4歳の娘さんが犠牲になった。事故の知らせを聞いたローマンが、居ても立ってもいられず、墜落現場にボランティアとして紛れ込み、ネックレスや遺体を見つけるシーンもほとんど事実になっている。
現場に駆けつけたカロエフさんは、トウモロコシ畑に横たわる奥さんの遺体や、バスの待合所前でアスファルトに打ち付けられた息子さんの遺体、そして娘さんのネックレスと、木がクッションとなって無傷の娘さんの遺体を発見したのだという。悲嘆にくれたカロエフさんは、亡くなった妻子3人のイラストを描いた墓石を建立。一人で家にいることが耐えられず墓所で日々を送ったそうだ。
そんな彼に謝罪の言葉ひとつもなく、管制会社の弁護人は「和解しないとお金がもらえない」の一点張り。事故の一年式典にさえ管制会社の責任者は顔を出さなかった。事故の法的問題は、補償の過程でバシキール航空が倒産し解決が複雑化。結局、2006年、管制会社の従業員8人が殺人罪で起訴され、4人が有罪判決を受けたが3人は執行猶予、残る1人も罰金刑のみで終了。裁判では、直接のミスをしたデンマーク人管制官ピーター・ニールセン(映画はジェイコブ)の個人情報は秘匿され、責任の所在は曖昧なままになり。ニールセン本人は会社を辞め、名前わ変え、引っ越しをして新生活をスタートさせた。劇中は、復讐を目論む主人公に、取材で知り合った記者がミスをした管制官の名前と住所を明かすが、実際はカロエフさんがモスクワの私立探偵に依頼し、ニールセンの居場所を突き止めている。カロエフが、ニールセンが移り住んだスイスのチューリッヒ郊外の自宅を訪ね、ナイフで刺殺するのは事故から1年7ヶ月後の2004年2月24日。室内にいた妻と3人の子供は、唖然としてニールセンが死んでいくのを見守っていたそうだ。裁判でカロエフは、動機を話している。管制会社が、補償金として16万フラン(約2千万)を支払う代わり、他に何も要求するなと言ってきたこと。
それが頭にきて、直接、ニールセンに家族の写真を見せて謝ってもらうことに決めたが、ニールセンは謝罪するどころか写真を手で払いのけたので思わず刺してしまっという。
映画では10年以上服役したところで刑期が短縮されたように描かれていたが、実際は、もともと懲役8年の判決で、情状酌量のうえ刑期が見直され、2007年に釈放された。その後、故郷ロシアに帰ったカロエフは住民に歓迎され、2008年にはロシア・北オセチア共和国の副建設大臣に任命。2015年に再婚し、翌年には政府の最高賞「オセチアの栄光へ」というメダルを贈られている。若い世代を教育し、法と秩序を維持するために地域住民の生活条件を改善したのが受賞理由だという。

そんなこんなで
シュワちゃんの抑えた演技(ターミネーターぐらい抑えてないよ)や、被害者と加害者だけにスポットを当てた構成は、引き込まれてしまった。ただラスト事実と異なることで観客に間違ったメッセージとなってしまい兼ねないのが残念だ。自身間違って解釈してしまった。
まだ観賞されていない方々の為、
【ネタバレ!】にコメントを残します。
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