MOON

火花のMOONのレビュー・感想・評価

火花(2017年製作の映画)
3.5
原作未読。ドラマ視聴済。

1番最初に観たのがドラマなので、どうしてもそれとの比較になってしまいがちなんですが、やっぱりあの話を2時間にまとめる事の難しさを感じました。

悪くはない。要所要所を切り取って うまくまとめてはある。でも余白がない分、それぞれの関係性がとても希薄に見える。この作品の根本には自分が極めたいお笑いと世間受けとのギャップへの葛藤があって、そこを真摯に描いたのがドラマ。それゆえジメッとした暗さも苦さも生んだんだけど(それで序盤で視聴をやめた人もいたと予想)それがあったからこそ、ラストライブで号泣した。映画ではその積み重ねがなかったがために菅田将暉くんの演技頼りになってしまってて、グッとはきたものの号泣には至らず。山下との絆も存在も薄すぎた。映画→ドラマの順だったら良かったのになぁとしみじみ。でもこれを機に原作やドラマに入っていく人もいるのかなという面では責務を果たしてると思います。

キャストは桐谷健太さん、菅田将暉くんともにすごく良かった。ドラマ版では破天荒すぎて最後まで理解し難かった神谷さんが映画版では魅力に溢れてた。規格外、カリスマ性という面は薄いけれども包容力があって弱さも見えて。しっかり寄り添えるキャラになっていました。

菅田くんの徳永はとてもポップでエネルギー溢れるキャラ。頭の回転が早く瞬発力に長けてて、その場の機転も利く徳永で。ドラマ版の林遣都くんは職人肌でこだわりが強すぎるがゆえの生きづらさを感じさせられる徳永。とにかく優しい!と思わせられるキャラだった。同一キャラでも演じる人によってこれだけ色の違いが出るのは楽しかった。両者負けず劣らずの演技巧者だから尚更。

映画版はやはりダイジェスト版な印象が否めなかったけど、原作の原文をそのまま使ってるんだろなと思わされるセリフやモノローグで世界観を保っている感じはしました(ドラマも同様)。原文をそのまま語らせる事には賛否両論あるだろうけど、おそらくそれ以外の方法がないのではないかと思えるほど原作が素晴らしいんじゃないのかな。きっとその部分を伝えなければこの作品は成り立たないのではないかと思えて。原作が読みたくなりました。

あとエンドロールが最高だった。菅田将暉くんと桐谷健太さんが歌う『浅草キッド』。心の叫びのような2人の歌声と歌詞に泣きそうになってしまった。沁みる〜。その分を思わず加点してしまったぐらい良かったです(笑)

そして吉祥寺映画を吉祥寺で観るのはやっぱり良かった。さっき見た場所を通って帰るの最高。映画はドラマほど吉祥寺、吉祥寺してなかったけど満足しました。
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