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火花のlpのレビュー・感想・評価

火花(2017年製作の映画)
3.5
良い意味で予想を裏切られた!

「夢と現実」「やりたいこととやった方が良いと思われること」「先輩への憧れと、その凋落への悲嘆」。時間が経過するにつれて、登場人物達は異なる想いや感情の狭間で葛藤し、もがくのだけれども、彼らを突き放すことも甘やかしもせず、彼らの葛藤を「夢を追うことのリスク」と言わんばかりにしっかり認識し、真正面から描く姿勢が素晴らしい。
そしてその葛藤の果てに主人公達を待つものは、非常に細やかながらも暖かい肯定だった・・・というオチも良い。「芸人に限らず、夢追い人は得てして実力主義の厳しい世界で生きているのだ。細やかな希望を信じたって良いじゃないか」と、映画が優しく語りかけてくるようだった。

作品の面白さを下支えするのは、桐谷健太と菅田将暉の圧倒的な存在感。2人とも素晴らしかった!

見せ方が淡白すぎることや、前半の主人公達の姿が全く笑えないため、彼らが目指す「面白さ」が伝わってこないなど、演出面では不満が残ったけど、板尾創路が監督をしたことは成功だと思う。映画を撮ってはいるけれど、「映画の人」というイメージは薄い板尾創路が監督をしたことで、「芸人目線の映画」として作品の持つメッセージが嫌味無く受け入れられた。この効果は大きい。仮に同じ芸人畑出身の北野武や品川ヒロシが監督をしていても、映画監督としての実績(良いもの・悪いものの双方を含む)から、同様の効果は得られなかったと思う。

あとは、原作者が原作者だけに当然な部分もあると思うけど、吉本興業が製作に関わっていたり、桐谷健太の相方に元芸人の三浦誠己、菅田将暉の相方に2丁拳銃の川谷修士を起用するなど、随所から「芸人の映画」を本気でやろうとしていることが伝わることも好印象の一因。

「芸人の映画だから」と見逃してしまうには、あまりにも勿体無い一本です。
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