チャンミ

きみの鳥はうたえるのチャンミのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.1
クラブのシーンからは泣きっぱなし。
ヒップホップ、ブレイクビーツがエモーショナルだとみせた、はじめての日本映画じゃないかしら。
その要は、Hi'Specのトラック、OMSBのラップであるのはまちがいないのだけど、映画的な動に命を吹き込む説得力ある身体を見せてくれた石橋静河は心底すばらしいとおもった。
劇中では一晩じゅう続いただろうダンスを、わたしもみていたかったな。
原作は未読なのだけど、膿んだ地方都市の若者にだって、こうしたきらきらした時間はきっとあるはず、と三宅さんの音楽的嗜好による脚色だろうこのシーンには価値がある、とおもう。

音は、三宅さんの前作『密使と番人』の、映画館を想定した音響の良さと細密な録音からして、本作でも期待していた点で、生活の匂いというものを映画はとらえられない代わりに、コーヒーを淹れる、トーストにバターを塗る、などの音で見事な空気感を立ち上げていた。
いちいち引きのショットでしっかり絵面をみせるのではなく、観客に委ねているような采配も感心した。

だらしなさの背景にある貧しさや、広大な土地に対して緊密な人間関係という、地方特有の空気感にまで深くは及んではないけれど、仕事をこなす「僕」や、ハローワークで飴をくれるおじさんや、市井に手を伸ばそうとする感覚も手放していない。
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