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きみの鳥はうたえるのkyokoのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.0
昔「海炭市叙景」(本のほう)の暗さに挫折して以来、佐藤泰志は敬遠していた作家。
「オーバーフェンス」も辛かったので(でもこの辛さはほぼ蒼井優によるもの)、今作も観るかどうかかなり迷っていたのだけれど、フォロワーさんから続々とあがる高評価と、Hi'Specで鑑賞を決めた。

NHK朝ドラでの演技が恐ろしくヘタくそで、「夜空はいつでも~」で受けた印象は幻だったのか?と思い始めていたところの石橋静河。角度によってはちょっとぶちゃいくに見えるのは相変わらずだけれど、今作はそれがかわいかったな。めんどくさい女の色気と幼さの絶妙なバランスが際だっていた。逆に、いつもはちょっと苦手だな、と思ってしまう染谷将太がぜんぜん大丈夫なくらい、今作の柄本佑はすんごいブスだった(笑)。

OPとクラブシーンとED以外はほとんど劇伴はなかったと思う。
Hi'Specのパフォーマンス、もっと見たかったなー。コンテンポラリーダンサーとしての片鱗を見せつつも、ちゃんと素人風になってる佐知子のダンスと「オリビアを聴きながら」(ハナレグミVer.ってのがナイス)がすごく良かった。
渡辺真起子、萩原聖人といった演技派揃いの中での遜色のなさといい、ラストの表情といい、今回はとにかく石橋静河を絶賛したい。

感傷的になるには自分はあまりにも年を取りすぎていて、佐知子の「若さってなくなるのかな」という呟きには「ふっ、青いな」と片腹痛くなりつつ、半面、友だち家族恋人との関わりに「あー、めんどくさいな」と思いながらも、ふわふわと夜通しどうでもいい会話を交わした、たぶんいつも夏だったやつの、たぶんもう絶対戻ってこないやつを思い出して、まじか、あの頃の自分は佐知子じゃなくて、実は「僕」だったのかと愕然としたりして。

幕の開け方も閉め方も音楽もかなり自分の好みだった。
改めて佐藤泰志を読む気にはならないけど、三宅唱監督は今後も大注目。

※いろいろ思い返してスコア上方修正。
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