TaiRa

きみの鳥はうたえるのTaiRaのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
5.0
どんな映画が観たかったかって、こういう映画だよ。この映画をずっと待ってた気さえする。

120秒数えて奇跡を待つ柄本佑のもとへ「よかった、心が通じたね」と石橋静河が笑顔で登場した時に泣いた。佐藤泰志が出戻りして職業訓練校に通っていた時に書いた小説。発行はちょうどジャームッシュが『ストレンジャー・ザン・パラダイス』撮った頃。女がひとりいて、男がふたりいる映画。原田美枝子の面影がちゃんとある石橋静河がクラブ行ってチルい時間にひとりで踊ったり、カラオケで『オリビアを聴きながら』歌ってるのを観ると胸がきゅーってなる。彼女が真っ直ぐに言葉を発するのが好きだ。染谷将太が事後部屋に帰宅し、自己紹介してからのシークエンスが意味なく楽しそうで心地良い。時間が過ぎて行くのが怖いから、毎日遊びに興じてやり過ごす3人。コンドーム取ろうとしてベッドからずり落ちた女とケラケラ笑い合う、夜中に友達とコンビニへ行く時のワクワク、明け方クラブから出て来て駅まで歩く道のりの浮いた感じ、車のいない間に車道を横断する数秒間、美しい瞬間の集積で出来た映画。この瞬間を俺も知っている、と嬉しくなった。

今日は北海道で地震があった。今朝、函館の光が消える映像を観て、夜になって函館の光で始まる映画を観た。これは記憶しておこう。
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